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■■■■■ -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
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■■     のりこえねっと通信0196号 2018年11月28日発行
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■ ◆転送歓迎◆
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★配信専用アドレス[mailmag@norikoenet.jp]よりお送りしております。
賛同者の皆さま のりこえねっと通信をお読みの皆さま。

のりこえねっとTV「NO HATE TV」第51回は「右翼の言論圧殺を許さない」。
先日、南丹市が主催する香山リカさんの講演会が、右翼の脅迫によって中止となりました。
事件の詳細と、常態化している右翼の暴力的妨害についてまとめます。
11月28日(水)20:00より放送。是非ご覧ください!

<今号の目次>
1.11月28日のりこえねっとTV 「NO HATE TV」のお知らせ
2.反レイシズム情報
3.ヘイト街宣・デモ警報
4.新聞・雑誌記事・Webより
5.11月14日放送のりこえねっとTVダイジェスト
6.編集後記

1.11月28日(水) 20時よりのりこえねっとTV

NO HATE TV 第51回「右翼の言論圧殺を許さない」
https://youtu.be/jJNIh2FOTXY

京都府南丹市が主催する香山リカさんの講演会が、右翼の脅迫によって中止となった。
事件の詳細と、常態化している右翼の暴力的妨害についてまとめます。
ほかに入管落書き事件、ドルガバなど。

【今回は都合により、60分の放送です】

【NO HATE TV】
公式サイト:http://no-hate.tv/about
Twitter:https://twitter.com/nohatetv
Facebook:https://www.facebook.com/nohatetv
【のりこえねっと】
公式サイト: http://www.norikoenet.jp
Twitter:https://twitter.com/norikoenet
Facebook:https://www.facebook.com/norikoenet

<出演者>
◆安田浩一(やすだ・こういち)
ジャーナリスト。1964年生まれ。静岡県出身。
Twitter:https://twitter.com/yasudakoichi
安田浩一「ノンフィクションの筆圧」:http://www.targma.jp/yasuda

◆野間易通(のま・やすみち)
C.R.A.C.。1966年、兵庫県芦屋市生まれ。
Twitter:https://twitter.com/nomacrac
C.R.A.C.tumblr.:http://cracjpn.tumblr.com/
C.R.A.C.Twitter:https://twitter.com/cracjp

2.反レイシズム情報

★集会・デモ・セミナー・上映会などのお知らせを掲載します。
 HPのトップページにある『お問い合わせ』から 日時、会場、タイトル及び内容、主催者、主催者の連絡先などを300文字以内でお知らせ下さい。
https://norikoenet.jp/about_us/contact_us/

1)ヘイトスピーチ・ヘイトクライムの現状と課題

日時:11月29日(木)18:30~
場所:PLP会館4F(地下鉄・扇町駅、JR天満駅下車)
講師:郭 辰雄(カク・チヌン) コリアNGOセンター代表理事
主催:NPO労働と人権サポートセンター・大阪
TEL:06-6352-3400 FAX:06-6352-3401

2)水平書館Talk Live「家族とは 歴史とは 文学とは-在日コリアンを描く―」

在日という境遇で得たもの、失ったもの
それらを理解した時、文学ほどの物語が始まる

講師:深沢 潮
日時:12月1日(土)16:00開場16:45開始
会場:水平書館 千代田区神田神保町1-54 神田水平館ビル3F
参加費:500円
先着予約制:お名前・ご住所・電話番号明記の上
FAX:03-5577-6399 e-mail:suihei@bridge.ocn.ne.jpまで。折り返し確認のご連絡をいたします。
主催:東京大学外村大研究室内「水平講座」実行委員会

3)2018女性に対する暴力撤廃の国際デ― #Me Too

戦時性暴力の根絶を!<世界に拡がる Me Too と日本>

基調講演:李娜栄(い・なよん)さん「韓国における#Me Too とWith You」
福田和子さん「スェーデンの#Me Too」
佐藤かおりさん「セクシュアルハラスメントの現状と課題」
田辺久子さん「性暴力被害者支援の現場から」
濱田すみれさん「憲法24条改悪の動きと問題点」
日時:12月2日(日)14:00~17:00
会場:早稲田大学 戸山キャンパス 38号館AV-1教室
資料代:1000円(学生無料)
主催:日本軍「慰安婦」問題解決全国行動/戦時性暴力問題連絡協議会

4)今こそ沖縄の民意に応えよう!-玉城デニー新沖縄県知事誕生を受けて

沖縄県では、辺野古新基地建設中止を公約に掲げ、玉城デニー新知事が誕生しました。
「本土」の私たちは、「辺野古はノー!」と民意を示した沖縄県民に対して、どのように応えるのかということが今まさに問われています。
ジャーナリストの安田浩一さんをお招きして、沖縄ヘイトや今回の選挙戦について、また基地引き取りや県外移設についてお話いただきます。

講師:安田浩一
日時:12月7日(金)18:30~20:30(18:00開場)
場所:東京都新宿区西早稲田2-3-1 早稲田奉仕園内日本基督教会館AB会議室
資料代:500円
主催:沖縄の基地を引き取る会・首都圏ネットワーク
連絡先:080-7010-2170(事務局)soraksan97@gmail.com

5)第17回やまとこおりやま 人権フェア「ヘイトスピーチとは何か」

長年、外国人労働者問題、人種差別問題に取り組んでこられた安田浩一さんにヘイトスピーチの実態や、差別の状況について講演していただきます。

講師:安田浩一さん
日時:12月8日(土)13:00~
会場:DMG MORI やまと郡山城ホール・小ホール
主催:大和郡山市人権のまちづくり推進協議会

6)戦争をさせない世田谷1000人委員会総会・記念講演

記念講演:国際社会から見た日本の人権課題 朝鮮学校への差別を許さない!
講師:朴金 優綺(ぱくきむ・うぎ)さん(在日本朝鮮人人権協会)
日時: 12月13日(木)18:00開場 18:30開会
(記念講演は総会終了後19時開始予定)
会場:北沢タウンホール 3F ミーティングルーム
東京都世田谷区北沢2-8-18 「下北沢」駅(小田急線、京王井の頭線)南口から徒歩4分
地図→https://goo.gl/WfB1d4
☆趣旨に賛同する方はどなたでも参加できます。
☆参加費無料(賛同費にぜひご協力ください。)
主催:戦争をさせない世田谷1000人委員会
連絡先:戦争をさせない世田谷1000人委員会
〒154-0017 世田谷区世田谷1-41-12 世田谷教職員組合(世教組)気付
TEL:080-5645-6837(菅原)/FAX: 03-5490-1570
E-mail cxe00542@nifty.ne.jp(菅原)

7)「あなたならどうする?急増するキャンパスヘイトとフェイク

―ARICキャンパス反差別ガイドブック完成記念イベント」

日時:12月15日(土)15:00~18:00
会場:早稲田大学早稲田キャンパス14号館401教室
登壇者:古田大輔氏(BuzzFeed Japan 創刊編集長)
板倉由実弁護士(東京パブリック法律事務所)
梁英聖(反レイシズム情報センター(ARIC)代表)
主催:反レイシズム情報センター(ARIC)、共催:早稲田大学ジャーナリズム研究所
連絡先:contact@antiracism-info.com(ARIC)
参加費:無料

3.ヘイト街宣・デモ警報 (閲覧注意)

★★ カウンター行動(抗議行動)される際は十分お気をつけ下さい。★★
★★ 経験が少ない方は、複数での参加をお勧めします。 ★★

1)反グロ街宣

日時:11月29日(木)19:00~20:00
場所:新宿駅東口アルタ前

2)瀬戸弘幸講演会

日時:12月2日(日)
場所:川崎市教育文化会館

3)桜井誠 日本第一党国分寺横断演説会

日時:12月2日
10:00~11:00 国立駅北口
12:30~13:30 西国分寺駅
14:30~15:30 国分寺駅北口
16:00~17:00 国分寺駅南口前

4)江川まりデモ

日時:12月9日(日)14:00集合14:30出発
場所:未公表

ハッシュタグ #ヘイト行動情報 #ヘイトリポート もご参照ください。

4.新聞・雑誌記事・Webより

1)“嫌韓派”スピーチと反ヘイトが激突。厳戒のBTS東京ドームツアー、メンバーの言葉にファンは涙、安心…

BUSINESS INSIDER 11月14日

韓国発の世界的アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」が11月13日、東京ドームでコンサートを行った。
https://www.businessinsider.jp/post-179480?itm_source=article_link&itm_campaign=/post-179495&itm_content=https://www.businessinsider.jp/post-179480

2)ヘイト犯罪が17%増、人種や民族理由が6割 米FBI

朝日新聞 11月14日

米連邦捜査局(FBI)は13日、2017年に国内でヘイトクライム(憎悪犯罪)が7175件報告され、16年に比べて約17%増えたと発表した。
https://www.asahi.com/articles/ASLCG2D9XLCGUHBI00H.html

3)【フェイクニュースを超えて】 SNSのうわさのせいで焼き殺され、メキシコの小さな町で

BBC 11月16日

メキシコの小さな町で、子供を誘拐した人間がいるという噂がメッセージ・アプリ「ワッツアップ」で広まった。噂は作り話だったのだが、誰も真偽を確認せず、興奮した群集が男性2人を焼き殺してしまった。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46217585

4)ヘイトスピーチ、どう立ち向かう 名古屋で講演会

朝日新聞 11月19日

特定の民族などへの差別をあおる「ヘイトスピーチ」を考える講演会が17日、名古屋市中区の愛知県弁護士会館であった。
https://www.asahi.com/articles/ASLCK7L28LCKOIPE010.html

5)デモ参加者と反対の男ら JR垂水駅でつかみ合い

神戸新聞 11月19日

同署によると、飲食業の男は同日、大阪市内で日韓断交を訴えるデモ行進に参加。建設業の男はデモに反対する立場で現地におり、以前から顔見知りだった。
https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201811/0011834442.shtml

6)大阪市、まとめサイト記事を公表 ヘイトスピーチ認定

共同通信 11月19日

大阪市は19日、ヘイトスピーチ抑止を目的とした条例に基づき、インターネット掲示板で在日韓国・朝鮮人への差別的投稿を集めて編集した二つの「まとめサイト」の記事がヘイトスピーチに当たるとして、サイト名と投稿内容を市のホームページで公表した。
https://this.kiji.is/437183474816287841?c=39550187727945729

7)早期に差別撤廃条例を 市民団体が署名4万人分を市に提出

東京新聞 11月20日

市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は十九日、公的施設でのヘイトスピーチ(憎悪表現)を未然防止する川崎市のガイドラインの見直しと、人種差別撤廃条例の早期制定を求める署名約四万筆を、市に提出した
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201811/CK2018112002000119.html

8)東京入管ツイッター炎上「難民解放」落書き対応巡り

日刊スポーツ 11月21日

東京入国管理局(東京都港区)が、近くの歩道に「FREE REFUGEES(難民を解放せよ)」とスプレーで書かれたことに対し「落書きは止めましょう」と公式ツイッターに投稿、批判的なコメントが殺到していることが21日、分かった。「人権侵害への抗議を無視して落書きと言うのはおかしい」といった内容が多く、「炎上」状態となっている。
https://www.nikkansports.com/general/news/201811210000860.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp

9)入管法改正案「移民はすでにいる」「実習生の声を聞け」支援団体ら集会

弁護士ドットコムニュース 11月21日

ヘイトスピーチ問題に取り組む師岡康子弁護士は、受け入れ議論の前に、人種差別撤廃政策を確立すべきと述べた。
https://www.bengo4.com/c_5/n_8894/

10)シナゴーグでの銃乱射 ユダヤ系米国人が危惧した最悪の事態が現実に

朝日新聞GLOBE+ 11月23日

私はユダヤ人なので、子どもの頃は教会でナチスによるユダヤ人の大虐殺について多くのことを学んだ。
https://globe.asahi.com/article/11960670

11)「デマやヘイトを放置した結果が今に」 ファクトチェックの意義、山田教授に聞く

沖縄タイムス 11月25日

近年、誤った情報や誤解を招くような発言を基にした「沖縄像」が拡散し、定着しつつある。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/349301

12)<社説>香山氏講演中止 表現の自由侵害許せない

琉球新報11月25日

香山さんへの攻撃は、沖縄に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)と通底する。放置してはならない。毅然(きぜん)とした態度で向き合う必要がある。
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-838998.html

5.11月14日放送 のりこえねっとTVダイジェスト

NO HATE TV 第50回「植村裁判不当判決詳報」

https://youtu.be/-tCYdVpsWxU

元朝日新聞記者の植村隆さんと弁護士の小野寺信勝さんをゲストにお迎えしてお送りします。

◇BTS「韓国Tシャツ」騒動は日刊ネトウヨのコラボだった!?

BTS(防弾少年団・バンタン)騒動の経緯
  • 9月16日 秋元康とのコラボ中止。
  • 10月15日 嫌韓まとめサイトが「原爆Tシャツ」を非難
  • 10月25日 東スポが「原爆Tシャツ」を報道
  • 11月8日 「ミュージック・ステーション」出演中止
  • 11月9日 年末の音楽番組の出演がすべて白紙に
  • 11月13日 東京ドームから日本公演スタート
 「patriotism」Tシャツは、韓国が植民地から解放されたことを喜ぶ趣旨のもの。Tシャツメーカー自体はちょっとウヨってる?が、韓国にとっての反植民地主義、3・1運動などをモチーフにしており、この件ではすでに謝罪している。問題は日本に嫌韓感情が蔓延して、あらゆる韓国人朝鮮人の揚げ足をとろうと必死になっている人がいるということ、ネトウヨ的なものに対してビビりすぎ、気を使いすぎ。そもそもTシャツ着てたのは2017年で、それについて釈明しないとテレビに出さないというのはおかしい。きのうサイモン・ウィーゼンタール・センター、被団協にも謝罪していますと野間さんが言います。

 さらに、発端は「イルベ」(日刊ベストストア)で、「2ちゃんねる」にもたとえられる韓国の匿名ネット掲示板サイト。最近はセウォル号事件で「被害者特権を許さない」などとまるで日本のネトウヨ、文字通りの反日。今回のTシャツ問題でも(BTSは)素晴らしいと賞賛し、日本の「カイカイch」で翻訳されて載り、翌日にまとめサイトに載った。発端は韓国のウヨサイトです。懲戒請求と同じ流れ。Tシャツの柄の問題ではない。ヘイトスピーチの話を一切無視して懲戒請求問題を取り上げたNHKの番組のよう。植村さんの問題とも同じ、と言います

◇入管法「改正」案の問題点

事実上移民への門戸を開くものなのに、移民、移住労働者という言葉を一切言っていない。安価な労働力を増やしたいだけと安田さんが言います。

在留資格を新設
  • 特定技能1号 条件:生活に支障のない会話ができる、一定の知識や技能をもっている。在留期限最長5年 家族の帯同不可
  • 特定技能2号 条件:生活に支障のない会話ができる、熟練した技能を持っている。在留期限更新可能(最長何年まで更新できるのかは不明)。家族の帯同可。
現在の在留資格
  • 留学生は週28時間までアルバイト可
  • 技能実習生は最大5年滞在可
  • 高度専門職は医師、教授、外交官など
 制度的な保証は何もない。「労働力」と日本政府は口が裂けても言わない。造船、農業、宿泊、建設、介護などの分野を外国人で穴埋めしよう、いつか帰ってもらえる労働者という位置づけ。人権を含めた制度的な保証を設けないうちに人だけいれる、人権も保障されないまま日本に定着を進めるのは非常に問題あり、と安田さんが言います。担当省庁すらない。ただ労働力としてしか見てない、と憤ります。「欲したのは労働力だったがやってきたのは人間だった」というマックス・ フリッシュの言葉をかみしめなければいけない。

 移民とは「定住国を変更した人」。労働のためであれ日本に定住すると決めたら移民なんです、と野間さん。

 250万人の外国人が日本にいる。十分移民国家。外国人によって私たちの生活がなりたっている。日本は外国人にとって働きやすい国なのか魅力ある国なのかもきちんと考えなくては、と安田さんが言います。

◇植村裁判 不当判決

 11月9日札幌地裁で「棄却」の不当判決が出ました。植村隆さんが西岡力、㈱文芸春秋、櫻井よしこ、新潮社、ダイヤモンド社、ワックを被告として「捏造記者」と書かれたことに対する名誉棄損損害賠償請求をした訴訟。

 争点は、櫻井よしこの「植村隆は金学順さんが身売りされてきたと知っていたにもかかわらず、意図的にそれを隠して官憲の強制連行だと報道した捏造記者である」に対して、植村隆さんは「そのような事実はなく、『捏造記者』は名誉棄損である」として訴訟を起こし、今回札幌の最初の判決でそれが認められなかったということですね、と野間さんが確認します。

  要点を植村隆さんが説明します。
 櫻井よしこによって私の社会的評価が低下した、名誉を棄損したということは認めた。記事が捏造ということも認めていない。ここはポイント。そういう事実があるのに、櫻井氏が、不十分ながら取材をして植村が捏造したと「信じても仕方がない」と櫻井氏を免罪した。(植村の)名誉を低下させたけれども責任はないよ、と。

 金学順さんが身売りされていた証拠はないが、「身売り」の3つの証拠として櫻井氏が挙げたのはハンギョレ新聞、月刊宝石92年2月号の臼杵敬子さんの論文、金学順さんの訴状です。記述はないのに「強制連行」には全く言及せずに「身売り」と解釈。さら訴状内の記述から、植村氏は、『継父によって人身売買された』という「重要な点を報じなかった」として捏造記者と言った。しかしその訴状にもそれは書いてなかった。本人尋問でも指摘され認めた。本人と雑誌WILLが訂正記事を出している。

 「ないことを書いて、書いてあることを書かなかった」というのが櫻井さんの記事、と安田さん。
 櫻井さんは、『月刊宝石』の臼杵敬子さんの記事「日本人将校と養父の間で喧嘩が始まり」以降をまったく引用せず、意図的に無視。

 判決でも「人身売買説は真実と認められない」と言っているにもかかわらず、櫻井さんが信じたのも「相当性がある」という甘い、そして植村の義母が太平洋戦争犠牲者遺族会の幹部だからしょうがないよねという判決です、と植村さん。

真実相当性の法理とは
  1. 公共の利害にかかわる事実で
  2. 公益を図る目的で掲載し
  3. その内容が真実か(真実性)、または真実と信ずる相当の理由(真実相当性)があったと立証できれば、免責される
 「真実相当性」について法律的な解説をもう一人のゲスト、弁護士の小野寺信勝さんにお話しいただきます。
 札幌弁護団の事務局長をなさっています、小野寺弁護士が語ります。
名誉棄損は認定されています。ですから櫻井氏側としては免責させるため立証をしなければいけない。
 まず一つは「捏造をしたのは真実」との立証だが櫻井さんは立証を失敗。
次の問題は真実相当性。「信じたとしても仕方がない」ということ。ウソでも信じれば免責されてしまうから、合理的資料・客観的な状況を元に信頼してもしかたがないとの立証が必要。
 もう一つは、書かれた1991年の記事を基準にするのではなくて、櫻井さんの2014年当時の知見を元に捏造だと信じても仕方がないかどうかを判断しなければいけない。

 野間さんが言います。もともと「真実正当性の法理」はジャーナリズムとか取材をする中で最初に得た情報によって報道したことが間違っていて、後に間違っていたことが判った場合に法的に裁かれるのはおかしい、というためのもの。今回の場合はどうなのですか?

 小野寺さんが答えます。
 二つの問題があります。
 1つは客観的資料があったかどうか。先ほどの3つの証拠は裁判でケチがついている。一部しかとってないし、恣意的な評価を加えて「人身売買」だという攻撃をしていた。証拠の取り方が恣意的なこと。
 もう1つは、平成3年から4年の証拠。記事を書いた時点ではこれとは違う証拠、より価値の高い研究成果があるにもかかわらず、それを無視。なにより植村さんにも取材せず朝日新聞にも慰安婦にも会ったことがない。
 「捏造」と信じ込むためには最低限植村さんに取材をしなければいけないだろう。弁護団は、真実相当性のための客観的な状況はないので、裁判所の判断はおかしな判断だと思っています。
 (櫻井氏は)(金学順さんの)訴状に書いてない40円で売られたなどといろんなところで言いふらして、間違いを認めて訂正した。みんなびっくり。金学順さんに直接取材し、同様の記事を書いた元北海道新聞の喜多さんが証人として出廷し、櫻井さんの言い分はおかしいと。雑誌WILLも間違い記事、訂正記事など出していたので判決は悪夢のようだ。事実関係の闘いでは勝ってきた。言論戦で勝って判決で負けた悪夢のよう、と植村さんは語ります。
 安田さんも、勝てると思っていた裁判。勝ちっぷりの問題だと思っていた。がっかりしたと同時に憤りを感じました。今回の問題は、捏造記者と誹謗中傷が書き込まれただけでなく「植村バッシング」現象が起きたことです、と語ります。

 植村さんが語ります。
 神戸の女子大学の専任教授に決まっていたのに、西岡力、櫻井よしこがバッシングを開始。ふたりだけでなくインターネットの世界で広まり、娘の顏までさらされ「自殺するしか追い込むしかない」とか勤めていた北星学園大学に脅迫状が来て「娘を殺す」と名指しで来る。警察の警備が付くまでに。
 それで、信じちゃったからしょうがないもんね、などと言われると植村バッシングはいったい誰が起こしたのか。判決にこれは全然反映されていない。非常に危険な判決。これだといくらでも人の誹謗中傷ができることになる。「捏造」は新聞記者、ジャーナリストにとっては死刑判決。日本の言論にとって非常に良くない。

 ジャーナリズムを委縮させないために今回「真実相当性」が認められたのかという野間さんの問いに小野寺さんが答えます。
 ジャーナリストだったら、真実相当性が高いほうに働くだろう。今回は事実を調査する時間はあったし、ジャーナリストだから要件を一般より下げる方向に働くケースではないと思います。

 安田さんが言います。一般読者とジャーナリストを同列に見ている気がした。むしろジャーナリストだからハードルを上げるということはあっても下げることはないだろう。

 小野寺さんも同意します。判決は、櫻井さんの取材のずさんさを一切評価していない。していないどころか救済までしている。訴状の誤りについても、「挺身隊」と「慰安婦」の言葉についても、問題とならないとして一切判断をしなかったり。北海道新聞の喜多さんも同じような記事を書いていて、植村さんだけバッシングされるのはおかしいとおっしゃったほど。当時は一般的な報道だった。何よりも強い証拠だと確信を持っていたが、そこをあっさり切り捨てた判断はとても納得できません。

 朝日バッシング、韓国人のつれあいということ、また妻が太平洋戦争遺族会の幹部の娘であることから櫻井らはデマを流した。訴状に書いてないことを記事にしたとしたら証拠改ざんでありひどいバッシングがあると思うんですが。にもかかわらず判決は、「訴状の援用に正確性が欠ける点があるとしても、真実であると信じたことに相当性を欠くと言えない」というんです、と植村さんは怒ります。正確性を欠くというより、ないことが入っているんです。

 櫻井さんの場合、取材をして真実に近づこうとした行為そのものがない。「真実相当性の法理」がジャーナリズムの表現の自由を守るための免責事項である点から言っても、今回、櫻井よしこに適用すべきではないですよね、と野間さんが言います。

 ジャーナリストということで免責が考慮されることもあるし一方でジャーナリストは言葉で責任を負う仕事であり影響力も強い。そういう人が取材を尽くさず人の名誉を傷つけたのに免責させていいかという局面もあると思います、と小野寺さん。

 植村さんの弁護団声明にも、「櫻井氏がジャーナリストであることを無視して、櫻井氏の取材方法とそれによる誤解を免責するものである」とあり、ジャーナリストなのだからよけいに責任があるだろうとしていますし、と野間さん。

判決の「論理の飛躍」について

 「植村氏が敢えて事実と異なる事実を執筆したと信じたとの判断には論理の飛躍がある」について、どう論理が飛躍しているのか詳しく、と野間さんが小野寺さんに説明を求めます。

 小野寺さんが解説します。
 人身売買と信じたことについて、一つは、あの証拠からはどう読み込んでも無理がある。しかしそれでも認定した。もう一つは「敢えて」ですが、理由としては植村さんの親族関係しかない。妻が太平戦争犠牲者遺族会の幹部の娘であるという1点のみ。その事実のみをもって「捏造」というのは証拠としてはまったく足りないし論理が飛躍していると思っています。

 これは高裁でひっくり返るのでは?と野間さん。

 小野寺さんが解説します。
 当然勝てると思っていて負けた。支援者が力を入れてくれ証拠も集めてくれて、運動面でも支えてくれている。こちらから反論できるポイントもたくさんあるので十分ひっくり返ると思っています。東京は11月28日結審で3月までに出るか場合によっては新年度明けかも。札幌判決が影響するかもですが使えるものもあり、東京は主に「事実適示」か「論評」か、という事実的な争いをしています。

 事実適示は免責するための要件が厳しい。論評は前提事実の重要部分さえ真実であれば免責されます。札幌訴訟でも常に櫻井さんは論評である、という主張をしていた。東京も同じく文春側は論評だと言っている。札幌裁判ではすべてでないが、向こうが「論評」と言っていた事実も「事実適示」の枠組みに嵌めているんです。この枠組み自体は東京裁判に場合によってはいい影響を与える可能性もあると思っています。

 「論評」というのは、言論の事由の範囲内であるとして名誉棄損が認められないことが多いわけで、「事実適示」の場合には、虚偽の事実の適示、つまりデマですか、と安田さんが尋ねます。
 虚偽とは限らず、公益性がない場合があります。公共性や公益性をクリアしている場合にはいわゆるデマです、と小野寺さんが答えます。

 何が闘われているのか分かりにくい部分が多いと思う、と野間さん。朝日新聞が謝罪検証記事を出したことで吉田証言と吉田調書の話もごっちゃになってわかりにくい。
 書籍が出ることになりました。「慰安婦報道『捏造』の真実 -検証・植村裁判―」花伝社・1000円+税・ 12月5日発売です。

 書き下ろしです、と植村さん。東京訴訟と札幌訴訟で、西岡さん、櫻井さんがどれだけインチキをやっているかが全部わかる。東京訴訟における西岡さんの側のインチキも、やはり訴状にないことを書いていることが中心です。

 西岡力について、植村さんが語ります。
 9月28日付け「金曜日」で特集しています。「法廷で明らかになった西岡力のウソ 論拠の記事を改竄し、『連行』の証言は虫植村氏の裁判で本人が認める」の中の「西岡力氏による三つの作為」として、
  1. ハンギョレ新聞に書かれていないことを付け加えた。
  2. ハンギョレ新聞に書かれている重要な部分を書かなかった。
  3. デマの流布 金学順さんの訴状にはない「40円で身売りされた」
があります。櫻井さんと同じパターン。これが暴露された。言論戦では東京でも勝っているし判決はどうなるか。

 ネトウヨ、保守系のライター・記者・ジャーナリストは嘘しか書かない。裁判で判決が出てもそれが重視されない状況はどうしたらいいんでしょう、朝日新聞がへたれたからじゃないか、と野間さん。両論併記、ごまかし、どっちもどっち論、右翼に気を使いすぎ、この間は櫻井よしこにコラムに論評書かせてる。

 朝日バッシングの時廃刊せよ、と言っていたのが櫻井よしこさん。節操なさすぎますねと植村さん。

 朝日に限らず保守論壇に非常に気を使っていて、歴史修正主義が四半世紀かけて完成する過程を今見てると思っていて、逆に言うとあと25年するとまた逆転すると思うんで、あまり悲観はしてないと野間さん。でも積極的にやっていかないといけないときに、大手メディアがヘタレすぎ。メディアが政権、権力に牛耳られているという前提で話さないといけない。

 最後に植村さんが言います。
 私の問題は誰にでも起きうること。裁判では負けたけれど言論戦では勝っている。誰が見てもわかる。判決では認められなかったけれども、正義はどこにあるか徐々に伝わっているのではないか。高裁に行ったら十分に逆転できると思っています。
(まとめ・文責:のりこえねっと事務局)

6.編集後記

植村裁判での「真実相当性」にかかわる判決は到底容認できない。事実に至るまで取材を尽くせなかった、尽くさなかった櫻井よしこ氏は、ジャーナリストとして力量がない、と言われたも同然だと思うのですが。しかし本人はほっと胸をなでおろしているのでしょうね。東京訴訟のと、札幌訴訟の高裁での逆転勝利を見守っていきたいと思います。(お)
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のりこえねっと通信0196号2018年11月28日発行

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