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■■■■■ -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
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■■■ のりこえねっと通信0243号2020年10月14日発行
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 ◆転送歓迎◆
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★配信専用アドレス[ mailmag@norikoenet.jp ]よりお送りしております。
 
 賛同者の賛同者の皆さま、のりこえねっと通信をお読みの皆さま

 日本学術会議新会員候補の6人に対する菅内閣による任命拒否が大きな問題になっています。拒否の理由、誰の判断かなど説明責任は果たされず、学術会議の組織・活動の見直し、税金投入の是非にまで話が及んでいます。

 本日14日20時から NO HATE TV 第96回「学術会議攻撃はヘイト案件である」
をお送りします。問題を詳細に安田浩一さんと野間易通さんに語っていただきます。
ゲストに、香山リカさんを予定しています。どうぞご覧ください。

<今号の目次>
  1. 10月14日のりこえねっとTV NO HATE TVのお知らせ
  2. 反レイシズム情報
  3. ヘイト街宣・デモ警報
  4. 新聞・雑誌記事・Webより
  5. 9月23日放送 NO HATE TV 第94回ダイジェスト
  6. 10月7日放送 荒野に種をまく 第9回ダイジェスト
  7. 7.編集後記

1.10月14日放送のりこえねっとTV NO HATE TV 第96回「学術会議攻撃はヘイト案件である」

https://youtu.be/3PchAqWuW9k

 学問の自由を守れ? それもいいでしょう。しかし、問題はもっとはるかに大きいのではないか? ヘイトとレイシズムは、いつも「公金」を隠れ蓑に忍び寄る。教組攻撃、ジェンダーフリー攻撃、沖縄ヘイト、あいちトリエンナーレと大村知事リコール運動などを参照しながら、学術会議への攻撃を数十年スパンのヘイトな動きとして整理します。ゲストに香山リカさんをお招きします!

<出演>
◆安田浩一(やすだ・こういち)
ジャーナリスト
Twitter: https://twitter.com/yasudakoichi

◆野間易通(のま・やすみち)
C.R.A.C.

[NO HATE TV]
Facebook: https://www.facebook.com/nohatetv

[のりこえねっと]
公式サイト: https://norikoenet.jp/
Twitter: https://twitter.com/norikoenet
Facebook: https://www.facebook.com/norikoenet

2.反レイシズム情報

★集会・デモ・セミナー・上映会などのお知らせを掲載します。

1)早稲田大学演劇博物館 2020年度秋季企画展
「Inside/Out ─映像文化とLGBTQ+」

展示構成
  • 戦後日本映画を読み直す
  • 日活ロマンポルノと薔薇族映画にみる性のカタチ
  • 1980~1990年代 エイズ・パニックと「ゲイ・ブーム」以前以後
  • ニュー・クイア・シネマの到来と映画祭の隆盛
  • ゼロ年代以降の国内メディアとLGBTQ+
  • 性的マイノリティの老いと若さを考える
会期:9月28日(月)~2021年1月15日(金)
開館時間:10:00~16:00
休館日:10月は土曜・日曜日。11月以降はHPでお知らせします。
会場:早稲田大学演劇博物館 2階 企画展示室 
入館無料
主催:早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点
 https://www.waseda.jp/enpaku/ex/10407/

2)≪要申込み≫日朝関係史講座 第1回「小林為太郎-朝鮮人権利擁護に関わった弁護士」
日本と朝鮮半島の友好を願う 2020年度同志社大学日朝関係史講座「朝鮮解放から75年 日朝関係のいま、むかし」

日時:10月17日(土)12:00~ 毎週土曜日正午配信(公開期限は24時間)
場所:YouTube上での開催。
テーマ:小林為太郎-戦後京都において在日朝鮮人大衆の権利擁護に関わった弁護士
講師:鄭祐宗(チョン・ウヂョン)さん(同志社大学教員)
参加費・資格:無料、一切なし(どなたでも参加できます。)
主催:同志社KOREA文化研究会
連絡先:doshisha_koribun@yahoo.co.jp 担当/李宗海(リ・チョンヘ)

案内→http://www17.plala.or.jp/kyodo/
チラシ→http://www17.plala.or.jp/kyodo/1219.pdf
(10/17~12/19全9回の第1回です〕
※前期に引き続き、新型コロナウイルス拡大防止のためネット上での開催。
 受講を希望される方はURLを配信のため事前に上記のメールアドレスまでご連絡ください。

3)≪要申込み≫企画展「ハンセン病と朝鮮人」記念講演会
「栗生楽泉園で出会った在日コリアンたち」

案内→https://kouraihakubutsukan.org/

入館日・時間は事前予約制となります。
 下記の予約表の項目をすべてご記入頂きお送り下さい。
 予約表→https://kouraihakubutsukan.org/ahbooking/
 その他TEL/FAXもOK! TEL:03-5272-3510/FAX:03-3207-0533 

企画展「ハンセン病と朝鮮人-差別を生きぬいて-」
期間:6月24日(水)~12月27日(日)
場所:高麗博物館
   〒169-0072 東京都新宿区大久保1-12-1 第二韓国広場ビル7階
   (1階ファミリーマート)
   地下鉄大江戸線・副都心線「東新宿駅」A1出口 徒歩4分
   西武新宿線「新宿駅」徒歩7分
   地図→https://kouraihakubutsukan.org/access/

開館時間:12:00~17:00
休館日:月曜・火曜、年末年始
※展示替えのため臨時休館することがあります。
入館料:一般 400円、中・高生 200円

記念講演会
◆オンライン参加
(定員100名)参加費:1,000円(振込)
 感染拡大防止のため、なるべくオンライン参加でお申し込み下さい。
 お申込いただいた方には、こちらからメールにて振込先のお知らせなど当日までに3回のメールをお送りする予定です。

◆会場参加
(定員14名)参加費:1,000円(当日受付にて)
 予約なしの参加はできません。

ご注意:
 下記のお申し込みフォームに参加方式(オンラインか会場)のご記入をお願い致します。
 参加申し込みフォーム→https://kouraihakubutsukan.org/sanka-online/

4)≪要申込≫ふぇみ・ゼミ企画オンラインセミナー【敗戦・解放から75年】問われ続ける戦争責任・植民地支配責任とはなにか?
【第4回】「ジェンダーと国家暴力、責任の問題:台湾228事件を題材に(仮)」

全てオンライン配信での実施です。

 228事件の中で、死亡した人監禁された人の多くは男性で、その配偶者は「政治的寡婦」と私が呼ぶ状態になった。……ジェンダーとそのほかのアイデンティティが交差するとき、私たちは国家暴力に対しどのような反省をしなければならないのだろうか。

日時:10月20日(火) 19:00-21:00
講師:沈秀華(Shen Hsiu-hua)さん(台湾・国立清華大学社会学研究所所長)
参加費:一般:1回券1,500円/一般:1回券1,000円/ふぇみ・ゼミ寄付者:1回券1,000円/ふぇみ・ゼミ生[2020年度後期参加者]無料
申し込みHP:https://femizemi-sensosekinin2020.peatix.com
ふぇみ・ゼミ公式HP:http://femizemi.blogspot.com/
主催:ふぇみ・ゼミ(問い合わせ:femizemi2017@gmail.com

5)植民地教育から考える「教育の権利」「差別なき社会」を目指す在日コリアンの闘い


  • 植民地教育と同化主義
  • 在日朝鮮人の子どもたち
  • 苦難の道を歩んだ民族教育
  • 現在に続く植民地主義
  • 高校生が原告の「無償化裁判」が闘われている。
 「差別なき社会」を目指して。日本社会の一員、隣人を支援するのは日本人としての責任ではないだろうか?

日時:10月23日(金)18:30開場/19:00~21:00
場所:スペースたんぽぽ:千代田区神田三崎町2-6-2ダイナミックビル4階
お話:佐野通夫さん(こども教育宝仙大学教員)
電話:03-3238-9036 FAX:03-3238-0797
主催:たんぽぽ舎 
参加費:800円

3.ヘイト街宣・デモ警報

★★ カウンター行動(抗議行動)される際は十分お気をつけ下さい。★★
★★ 経験が少ない方は、複数での参加をお勧めします。★★
★★ 無告知のヘイト街宣にご注意ください。★★

1)「朝鮮総連本部をさら地にする会」

日時:10月15日(木)
    駅頭街宣 13:00集合/13:40~ 市ヶ谷駅前交番付近
    抗議街宣 14:00集合/14:00~15:00 鮮総連中央本部前
主催:「朝鮮総連本部をさら地にする会」(代表代行・佐藤悟志)

2)「交通安全の啓発ポスティング」九十九晃

をおひとりでなさるそうです。(ずいぶん〇タレ)
日時:10月17日 場所:都内23区内にお住まいの方お気をつけください。 

3)日韓断交デモin銀座

日時:10月25日(日)15:00集合/15:30~
場所:神田駅 常盤公園
主催:日本国を愛する国民の会
責任者:新妻舞美

★10月31日にも九十九晃が街宣をほのめかしていますが詳細不明です。

#ヘイト行動情報
もし街中で見かけたら、このタグをつけてツイートしてください。以下の情報があるとわかりやすいです。
  • 場所(駅・交差点名、目印の建物など)
  • 人数がわかる全景写真
  • 団体がわかる幟や弾幕の写真
  • 弁士の顔写真

4.新聞・雑誌記事・Webより

1)杉田水脈議員「女性はいくらでもウソ」発言を一転して認め謝罪。「女性を蔑視する意図全くない」と釈明

ハフポスト 10月1日

 杉田議員はこれまでも、人権意識に欠けた、差別的な発言を繰り返してきた。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f755ac4c5b66377b27d1d40

2)「絶望から前に進んでいる」 川崎市ヘイト条例3カ月 被害受けた崔さんに聞く

東京新聞 10月1日

 ヘイトスピーチに全国初の罰則を設けた「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」の全面施行から一日で三カ月を迎えた。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/58934

3)「差別には黙らない」6年続く“ヘイト街宣”を阻止 木陰に生まれた交流の場

沖縄タイムス 10月2日

 かつて陰湿なヘイトスピーチに染められていたガジュマルの木陰に今、鮮やかな「NO HATE」の旗が翻っている。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/640834

4)NHK、批判受けた投稿をHPに転載し残す ひろしまタイムラインの「朝鮮人」記述

毎日新聞 10月2日

 NHK広島放送局がツイッターで展開している「1945ひろしまタイムライン」上で「朝鮮人」を巡る記述が差別的だと批判されている問題で、同局は2日、問題ツイートを含む8月までの投稿を削除した上で同局のホームページ(HP)上に転載した。
https://mainichi.jp/articles/20201002/k00/00m/040/274000c

5)トランプ氏の極右偏重に物議 勢力拡大を警告―米

時事ドットコムニュース 10月2日

 米大統領選の討論会でトランプ大統領が、白人至上主義など人種や宗教に基づく差別的思想を持つヘイトグループ(憎悪集団)に指定されている極右団体「プラウドボーイズ」を非難せず、「待機せよ」と発言したことが物議を醸している。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020100100853



6)「レッテル貼り、変わらず」ひろしまタイムラインを議論

朝日新聞 10月5日

 差別的なツイートの削除を求める署名集めをしているカナダ在住の乗松聡子さんや、マイノリティーへの差別撤廃などをめざして活動しているNPO法人「共生フォーラムひろしま」の李周鎬(リチュホ)理事長ら4人が登壇。
https://www.asahi.com/articles/ASNB476QKNB4PITB006.html

7)日本政府の難民2人長期収容「国際法違反で差別」 国連人権理事会部会が指摘

毎日新聞 10月6日

 日本で難民申請中の外国人2人が精神疾患などを訴えたのに入管施設に長期にわたり繰り返し収容した入管当局の対応について、国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁作業部会」は、「恣意的な拘禁などを禁じる国際法に違反する」との見解を示した。
https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/004000c

8)LGBT差別的発言の足立区議、謝罪拒否「不快と思っても別に良い」

毎日新聞 10月6日

 東京都足立区議会厚生委員長の白石正輝氏(78)=自民=によるLGBTなど性的少数者への差別的発言を巡る問題で、鹿浜昭議長と区議会自民党は6日、それぞれ白石氏に厳重注意をした。白石氏は「当事者が不快と思っても別に良い」と反発し、発言の撤回や謝罪をする意思はないという。
https://mainichi.jp/articles/20201006/k00/00m/040/295000c

9)「ヘイトと思われる」那覇市役所前の街宣 県が初めて認識示す

沖縄タイムス 10月6日

 那覇市役所前のヘイトスピーチ街宣を巡り、県は5日の県議会文教厚生委員会(末松文信委員長)で「ヘイトスピーチと思われる」との認識を初めて示した。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/643447

10)「トランスジェンダーだから」を理由に隔離された収容者に仮放免。今、彼女が願うこと

BuzzFeed 10月6日

「全てのLGBTは人として(他の人と)平等に扱われるべきです。私はトランスジェンダーだということを理由に隔離され、自由時間もずらされてずっと一人でした。最初はずっと泣いてばかりいました」
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/karihomen

5.9月23日放送 NO HATE TV 第95回「差別的アルゴリズム」

https://youtu.be/3C8WYY8j1DE

ゲストに木村元彦さんをお招きしています。

〇「朝鮮、かかってこいや」 

野間:「兵庫県サッカー協会元幹部が差別的発言 協会も処分せず」という記事に関して。飲み会の席で、元幹部が朝鮮サッカー協会の人に言った言葉。楽天の三木谷さんのお兄さんである三木谷会長が、「私的な問題」と言った。

木村:浦和レッズの試合でJAPANESE ONLYという横断幕が掲げられ、レッズの次の試合にはペナルティを科したことがあった。この時はチェアマンの村井さんがリーダーシップを発揮し、厳罰を処した。FIFA(国際サッカー連盟)やIOC(国際オリンピック委員会)は差別についてはゼロトレランスと明確に出している。スポーツ界から差別反対を発信し、一般社会に向けて差別のない社会をつくっていこうというのがIOCやFIFAの考え。日本のスポーツ界は差別禁止を明文化するが魂を入れず、今回はある種のもみ消し。公式の場ではないからいいということは、サッカーの場では差別はいけないが、一般の場ではいいというのと同じ。JFA(日本サッカー協会)も対応すべきだが、何ら聞こえてこない。

野間:かつて在日本朝鮮人蹴球協会は影の日本一と言われていた。

木村:初代団長は神戸出身。当時、日本にいるサッカー選手で№1と言われていた。日本の実業団からオファーもあったが、彼は在日本朝鮮人蹴球協会でやると言った。

野間:昔は差別的なことは問題にならなかったのだと思う。

木村:むしろサッカーの現場ではフレンドリーだった。帝京が強くなったのは朝鮮高校と試合やったからで、互いにリスペクトしあってた。今回は謝罪も出てなくて残念。

野間:サッカー協会の人同士で飲んで、元幹部が指導者に説教するのを、朝鮮サッカー協会の男性が止めたことでこの発言になったらしい。

木村:朝鮮学校は、昔はインターハイに出られなかったが、日本の学校がそれはおかしいと言った。以前なら「朝鮮、かかってこい」と言ったら周りの人間が止めたはず。

野間:問題になったら「北朝鮮が憎いという個人的な感情なので差別ではない」と言っている。ネトウヨ理屈。2000年代以降に北朝鮮の敵意を煽ったのがこういう結果になっている。

〇ひろしまタイムライン続報

野間:民団(在日本大韓民国民団)が救済申し立てをした。NHKは昔のことをリアルにやったと言ってるけど、実は違う。C.R.A.C.Okayamaも抗議や申入書を出しているが、問題の所在が理解されない。事実の一面を切り取り、悪意で解釈することが行われている。ひろしまタイムラインは在日の人のツイートがあれば全然違う。意図はなくても結果的に差別。ヘイト煽動効果に敏感になるべき。

〇日大ヘイト講師

安田:日本大学非常勤講師の菊池肇哉氏が、オンライン授業で、Blak Lives Matterのデモについて「略奪しているのは黒人さんばっかり。プエルトリコ人とか茶色い人たち、メスティーソも略奪しようとする。『北斗の拳』みたいに黒人さんが暴れている」といった発言をした。学生グループMoving Beyond Hateが署名を集め、文理学部の学部長へ申し入れと署名を渡した。学生たちが出した要求は、大学は差別に抗議する声明を発表すること、菊池氏の発言が明確な差別および差別煽動行為であることを認める、授業中でも差別はあってはならないものであることを認める、マイノリティ学生が安心できるよう差別を防止する責任があることを認める、さらに被害拡大防止のため差別禁止ルールを設け、菊池氏の講義を直ちに停止し、解雇してほしいと。また、被害を受けた学生がいないか緊急調査してほしい。
 面談に行く前に学生たちがプラカードを掲げた。署名は2734筆。講師は学校に謝り、問題になっているから怖いと。大学は今週末までに何らかの声明を発表するそうだ。大学側が申し入れを受けたことは評価できるが、誰を傷つけ、何を壊したか、差別にどう取り組むのか言及がない。大学が調査委員会をつくったが、マイノリティ学生や被害当事者を交えてやるべき。

野間:この講師は本当に怖がっていると思う。怖がらせることがブレーキになる。

安田:怖がらせるのは大事。本当に怖がってるのは被差別当事者なんだから。

〇愛知豚党続報 

野間:昨年やった、あいちトリカエナハーレをあいちトリエンナーレのメイン会場でやろうとして、警備を配備しなことを理由に県が断ったが名古屋市が会場を貸すと言い出した。

安田:県も1回受けたが、条件を出して断った。が、名古屋市は無条件で受けた。

〇退去強制拒否罪?

安田:読売の記事で「難民申請者らに社会生活認めます」とあり、ものすごい批判が起きている。一見良く感じるが、管理措置制度をしようとしている。仮放免の人やなんらかの形で入管(入国管理局)を出た人びとが管理人の監視下で社会生活を行うというもの。保護観察みたいなまさに犯罪者扱い。仮放免中や難民申請中に仕事ができるようにするのが社会生活のはず。退去強制罪は刑事罰を与えたうえで強制退去する。記事の最後のほうで飴と鞭をもうけたとあるが、どこに飴があるのか。

野間:在留特別許可のガイドラインを無視しはじめたからこうなってる。

安田:管理措置制度みたいな面倒臭いものをつくるなら在留特別許可を与えればいい。

野間:在留特別許可は、正規の方法で入国していないが、生活実態が日本にあり何年か経つ人の在留を認めたもので、難民認定をしなくても形になっていた。善良に生活しているからOKというのが従来の運用だった。

安田:日系ブラジル人は日本人の血が入っているから働いていいという論理。暮らす以上お金がかかるから労働していいと。それ以外は実習生か留学生のアルバイト。正規の労働者としての資格を与えず、抜け道に労働のしくみをつくり、いつか帰ってくれる人びとを受け入れてきた。労働者は増えてもいいが、非正規滞在が増えては困るからそっちは絞ろうと。日本が外国人にのっとられるという議論は行政の中でも根強い。社会保障費の増大とか。

野間:入管になかなか治療しない医者がいる。職員が被収容者を暴行していたらその常勤医が「GO!GO!」とはやしたてたり、「あなたの命は私の手の中」「早く国に帰れ」と言ったりする。あまりにひどいので、職員が被収容者に対して同情的な態度をとることもある。

安田:医学会のヘイト含有率の高さは気になる。入管の職員にしても何度もヘイト報告がある。外国人に対して一番敏感であるべきなのに、もっとも敏感でない人が最前線に立っているかのような風景すら見える。

〇サイバーヘイター

野間:デジタル改革担当相の平井卓也氏は元電通の人。2013年、自民党IT戦略特命委員長になり、それをT2(Truth team)という。IT企業や広告代理店などに依頼し、デマなどをネットで監視する。オバマ政権に類似したチームがあり、それを見習った。自民党ネットサポーターズクラブが2010年にできたが、そのリーダーもこの人。自民党がネトウヨを組織したもので、野党の候補者を中傷したりデマを流したりする。
「政治知新」というサイトを田村喬氏がやっていて、17年までやっていた会社の名前がT2。弟はただの会社役員だが、兄の田村ゆうすけ氏は菅さんの選挙区の県会議員で菅さんのお気に入り。兄もなりすましのブログをつくっている。政治にうとい主婦になりすまし、ピンク色のステレオタイプのデザインをしたり、そういう工作をいっぱいやっている。

〇差別的アルゴリズム

野間:大澤昇平さん。ネトウヨアカウントになったんだけど、メインはモザイク除去。昔、モザイクを取ると無修正のエロ画像が見れるというのが流行った。大澤さんのはAIを使い、画像を予測して新しい画像をつくるというもの。これは、問題が起きることがある。モザイクをかけたオバマ大統領は白人になった。白人が基準になっているのでは?
twitterで実験している人がいる。大きい写真を掲載する場合、一部をサムネイルとして表示するのだが、バラク・オバマとミッチ・マコーネル上院議員の写真をアップすると後者を表示する。写真の上下を変えても同じ。アルゴリズムが白人を優先的に選んでいる。顔認識ソフトでも、黒人の写真をGoogleに上げると「ゴリラ」というキャプションをつけたりする。大澤さんは反面教師的にいいこと言っている。中国人はパフォーマンスが低いというのはAIによる判断だと。

安田:保険会社のリスク判定で、地域により保険料が高くなることが問題視されたことがあった。

野間:AI以前からその問題がある。フィラデルフィアのある街の中心部の地図がレッドライニングされている。貧困やリスクの高い地域を赤線で囲み、保険料を高くしたり、契約しなかったり、社会的に不利益になることをする。リスク評価により、その地域の人たちは不利に扱われる。これは裁判になり、保険会社はフェアなデータだと主張した。

安田:アルゴリズムは計算の方法で本来、偏見の入る余地がない。AIが算出できないのは、なぜ犯罪が多発するのか、なぜ寿命が短いのか、そうした背景、歴史、社会階層の問題点。

野間:差別を再生産するのではないか。AIによって就職のデータを振り分けると、女性が差別される。高年収や高い地位を得ていることが少ないから、女性にはそういう仕事はできないと判断される。被差別部落に対して、その地域は公表してはいけないといった建前があるが、それはAIにはわからない。世界のどこでも、貧困エリアは犯罪が多く、治安が悪くなるが、それを是正する方向に社会は動かなくてはならないのに、AIは数字でリスクが高いと提供するだけ。公正に判断しているが、人間の社会が差別的な場合にそのまま反映する。
 白人らしい名前と黒人らしい名前で広告の出る確率が異なる。就職については、女性の方が収入の低い広告が出る可能性が高い。ある人がThree black Teenagersという言葉を入力したらマグショット(逮捕後に撮る写真)ばっかり出てきたが、Three white teenagersで検索すると楽しそうな画像が出てくる。プログラミングで改善できるが、放っておくとこうなる。
 最近、英国がビザ審査の人種差別的アルゴリズムを変更した。人種や国籍で差異が出てた。アメリカにCOMPASという再犯予測システムがある。再犯の可能性をAIで判断するもので、白人の場合、判断より実際の再犯の方が多く、黒人の場合は実際の再犯はAIの判断より少ない。COMPASに人種情報は入っていないが、居住地などによってAIに組まれる。Twitterの凍結判断もめちゃくちゃ。ネトウヨが多いとそっちに合わせちゃうということが起きているのではないか。

安田:ネトウヨに反論すると攻撃的ととらえられ、それが凍結に結びつくという回路ができあがっている。

野間:それに似たことが実験でわかっている。「グーグルの『ヘイト監視AI』が人種差別を助長する皮肉な結果」(Forbes)。グーグルでヘイトスピーチを監視するものをつくった。差別的な情報をたくさん与えた場合、運用すると、黒人の無害な発言がヘイトとされる率がめちゃくちゃ高かったんだって。TwitterとかFacebookの凍結判断は、単純にNGワードを入れているだけなんじゃないかと思うことが多くある。
 ひどいのはヘイトスピーチを引用して批判したものを、ヘイト投稿として消されることが多いこと。アルゴリズムでやっているから、差別ではないというのは一切無意味。AINOWという専門サイトが特集記事を組んでいる。そこに挙げられている差別事例。再犯予測システム(COMPAS)による人種差別、採用システムによる性差別、広告に見られる差別、価格設定に見られる差別、画像検索に見られる人種差別、翻訳ツールに見られる性差別。
 最後のは、「ある人は医師で、もう一人は看護師です」というトルコ語をGoogleで英訳すると「彼は医師で、彼女は看護師です」と訳す。トルコ語には三人称単数代名詞に性別はないのに。
差別的アルゴリズムの原因は、たとえば、
  1. 目的変数の不適切な定義
  2. 学習データに対する不適切なラベリング
  3. 学習データに内在する差別
  4. 特徴量の選定時に混入する差別
  5. 特徴量の差別的代用
  6. ⑥意図的な差別
 大澤さんの場合⑥じゃないかな。人工知能学会倫理員会が大澤さんの問題のあとに倫理基準を出している。さらにそのあとに「機械学習と公平性に関する声明」を出している。機械学習は単なる道具にすぎないと出している。国連欧州委員会では、AIに関する倫理ガイドラインを発表。AIは人によって監視される必要、すぐに停止でき問題が再現する必要、プライバシーに配慮する必要、メカニズムの追跡可能性、多様性の確保、環境福祉の向上に利用など。AIを過信しない。問題があるときにAIが間違っている可能性が高いことを認識できないとダメでは?

(まとめ・文責 のりこえねっと事務局)

6.10月7日放送 荒野に種をまく第9回「菅政権が継承したものー反知性政権の正体」

https://youtu.be/ikXM8lAkLPY

池田:まずは近況報告を。
布施:集英社のimidasというサイトに論文を出した。
安田:旅券の裁判が先月あり、次が2月。今月で解放されて2年になる。経緯などをまとめたい。

池田:日本学術会議6人の任命拒否について。

布施:日本学術会議法では、所轄は内閣総理大臣だが職務は独立して行うと規定。学術会議で名簿をつくり、首相が形式的に任命する。人事も独立性が高くなければならない。

池田:あちこちから抗議・批判が出ている。「自由と平和のための京大有志の会」が日本学術会議への政治介入に対する抗議声明を出した。

布施:戦前の日本では、学問に対する政府の介入が戦争の一つの大きな要因になった。

1933年:大学で赤化教育をしていると滝川幸辰教授がやり玉にあがって、法学部の教授や学生らが抵抗するが、文部省が強制的に追放。
1935年:東京帝国大名誉教授で貴族院議員の美濃部達吉氏が議員辞職になった。天皇は国家の機関の一つという説により、議会で謀叛人扱いされた。
1937年:日中戦争。
1939年:『古事記と日本書記』を著した津田左右吉氏が皇室を侮辱したとして起訴。
1941年:米英と戦争。

 学問で科学的に歴史を検証することができなくなっていく。これがまかりとおると、政府に反することが言いにくくなってしまう。

安田:人事を握ると忖度が始まる。学術会議だけではなく、政府の意向に沿って判断しようという話になってしまう。

布施:任命拒否は、学問の自由の侵害だという声明が出ている一方、学術会議こそが学問の自由を侵害しているという批判もある。学術会議は過去に2回、戦争につながる研究は行わないという声明を出している。が、議論は大学にゆだねており、学問の自由を封じ込めてはいない。
 学術会議の学者は年金をもらっているというデマも出た。その情報を流したのはフジテレビ報道局の上席解説委員の平井文夫さん。週刊女性などがファクトチェックをした。訂正したのは本人でなく、アナウンサーで「誤った印象を与えるものになりました」と、責任を観た側にも転嫁するような言い方だった。

池田:フェイクニュースを流したもの勝ちになっている。国は、言葉をもつ人たちを排除しようとしているのだと思った。この番組も、国家に敵認定された超やばい番組に思われてるのではないか(笑)。

布施:記者クラブに出しているような資料でも、防衛相からあなたは反自衛隊だから、ともらえないことがあった。アメリカの軍事作戦に動員されるのは違うのではないかなど、政策に反対したのであって、災害派遣は反対ではないし、反対賛成の二分はできない。にもかかわらず敵認定して分断させるのは戦前と同じ。ある学者のブログで、学術会議は軍事研究の自由を認めない一方、中国と交流していると書いてあった。学術の進歩のために、中国に限らず世界の学術会議との交流がある。軍事研究と中国との交流は全然違う話なのに、同じ土俵に乗せて印象操作している。

池田:次に、安田さんに旅券の発行拒否の話を伺いたい。

安田:3回目の裁判が終わった。トルコから入国拒否を受けたことが、旅券法13条にひっかかるとのことで出国禁止にされた。13条は発給拒否を規定した法律で1項は1951(昭和26)年にでき、発給には相手の国の法律や国際情勢を考慮に入れる必要があるとしている。当時は1つの国にしか行けなかったため、その国に入れなければ発給しても無駄だろうということ。国は国際法秩序の維持、国際信義のために発給しないのだと。
 他の国が入国拒否したから自分の国も出国禁止にするのは、G7の中で日本だけ。自分は犯罪者扱いをされている。国の主張を意訳すれば、「他の国でも密入国しかねないから、こんな奴に旅券を出したら国際信義に反する」ということ。
 シリアでは、反政府側地域は正規の手続きで出入国できないため、NGOやジャーナリストのほか、一般人も密入国・出国している。シリアで人質になり解放された人で旅券没収、発給拒否された人は、他に誰もいない。また、シリアだからやむを得ず密入国したのであって、他国に密入国してもメリットがない。「政府が認めた行動しかさせない、政府よりも詳しい国民の存在は許せない」というのが心情だろう。
 中村哲さんが国会に呼ばれた時、軍隊を出しても解決にならないと言ったら罵声を浴びせられたそうだ。彼が亡くなった時、JICAの人が「我々の安全対策は完璧です」みたいなことを言ったらしいが、そもそも現場で活動してない。中田考さんはイスラム法学者で、彼からアラビア語を教わった人が中東に行った時、イスラム国に入ろうとしていると疑われた。出国前に十数人の外務省の人間が来たらしい。その人は不安になって帰ろうとしたが、思い直してクウェート経由でヨーロッパに行くことにした。
 出国時に言っていた日程と違うからと、クウェートの入国管理局員と日本大使館員がいて「携帯みせろ」と言われ、イスラム国に関する画像があったというだけで入国拒否になり、旅券を没収された。取材を検討しているだけで出国が許されなかったカメラマンもいる。
 メディアも調べないどころか、デマを流す。メディアは適切な専門家を選ぶかどうか。後藤健二さんと湯川遥菜さんの事件については、朝日新聞だけが本を書いた。シリアの人質事件は家族に対して脅迫がくる。後藤さんの家族が外務省に相談したら、政府は交渉しないと言われ、専門家の協力を得て交渉していた。朝日新聞はその専門家に取材している。イスラム国は他の反政府グループからみても異常な集団で、イスラム国以外に拘束された人はそんなに待遇が悪くない。自分の思い込みと違うから、待遇良いのは怪しいというのは反知性の極み。

池田:香山リカさんのnote「反日、公金、ヘイト―学術会議、あいちトリエンナーレ、知事リコール運動」が面白くておすすめ。布施さんに聞きたいのは防衛費予算増額について。21年度は前年度当初予算比3.3%増。「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化」とホームページに記載されている。

布施:史上最高の5兆5000億円近く。安倍政権になって防衛費は毎年過去最高。米国防長官が先日、国防費をGDPの2%にしろと同盟国に要請した。一番ついていってるのが日本。自分のアイデンティティを国と一体化させることで安心する人はたくさんいるが、国は必ずしも国民が望む方向にいかない。

池田:底なしのコロナ不況による失業者の急増について。私の地元は製造業が多く、非正規雇用者の解雇や雇止めが増加。毛布や鍋、電化製品、布団、皿などは野宿をしている人たちなどが必要としているので、集めておいてほしい。

最後にひとことを。

安田:CALL4というサイトで裁判の寄付をお願いしている。トルコの入国拒否について、自分は聞いていない。外務省は「我々は聞いている」と。解放されて入管の施設に収容された時と強制退去の書類はあるが、5年間入国禁止の書類は出てこない。内部文書はあるが、それが証拠になるのか。

布施:事実に立脚しないやり方は失敗することが多い。

(まとめ・文責 のりこえねっと事務局)

7.編集後記

 日本学術会議の会員候補6人が任命されなかった件。「政治的な」発言があったから、との理由と言われていますが、自分達に批判をするものは潰そうという現政権の思惑が透けてみえる今回の措置です。徹底した理由説明が求められます。(お)
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のりこえねっと通信243号 2020年10月14日発行

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