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■■■■■ -ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
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■■■ のりこえねっと通信0240号2020年8月26日発行
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 ◆転送歓迎◆
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★配信専用アドレス[ mailmag@norikoenet.jp ]よりお送りしております。
 
 賛同者の皆さま のりこえねっと通信をお読みの皆さま
 NHK広島放送局による「#ひろしまタイムライン」という企画によるシュンちゃんのツイートが批判されています。「(朝鮮人が)『俺たちは戦勝国民だ!敗戦国は出て行け!』圧倒的な威力と迫力。怒鳴りながら超満員の列車の窓という窓を叩き割っていく。そして、なんと座っていた先客を放り出し、割れた窓から仲間の全員がなだれ込んできた!… 」など。
 75年前の日記をもとに、現代の広島の10代5人が「イメージを膨らませて」作っているとのこと。ツイートする前に意見する大人は誰もいなかったのか、型通りの「お詫び」をしたようですが、詫びる相手が違うのでは? むしろ炎上を狙っていたのでは?

 本日26日20時から NO HATE TV 第93回「歴史とは何か」を放送いたします。シュンちゃんの差別ツイートについても言及されます。どうぞご覧ください。

<今号の目次>
  1. 8月26日のりこえねっとTV NO HATE TVのお知らせ
  2. 反レイシズム情報
  3. ヘイト街宣・デモ警報
  4. 新聞・雑誌記事・Webより
  5. 8月12日放送 のりこえねっとTV NO HATE TV 第92回ダイジェスト
  6. 編集後記

1.のりこえねっとTV NO HATE TV 第93回「歴史とは何か」

https://youtu.be/PWyndAQj02k

 自己慰撫のために歴史をテキトーに改竄したり否定したりしすぎたため、何が本当だったかわからなくなっているリアル1984、それが現代の日本だ! というようなことを、ひろしまタイムラインや関東大震災記念日や韓国の光州事件対応などを題材にちょっと考えます。わりとフリートーク的なノリで。

<出演者>
◆安田浩一(やすだ・こういち)
ジャーナリスト。労働問題、差別、人権問題などを中心に取材・執筆活動を続けている。「ルポ 差別と貧困の外国人労働者」(光文社)「ネットと愛国」(講談社)「ヘイトスピーチ」(文藝春秋)、「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか」(朝日新聞出版)、「『右翼』の戦後史」 (講談社)、「団地と移民」(KADOKAWA)など。
Twitter: https://twitter.com/yasudakoichi

◆野間易通(のま・やすみち)
C.R.A.C.メンバー。著書に『「在日特権」の虚構』『実録・レイシストしばき隊』(河出書房新社) など。

[NO HATE TV]
Facebook: https://www.facebook.com/nohatetv

[のりこえねっと]
公式サイト: https://norikoenet.jp/
Twitter: https://twitter.com/norikoenet
Facebook: https://www.facebook.com/norikoenet

2.反レイシズム情報

★集会・デモ・セミナー・上映会などのお知らせを掲載します。

1)ロックを武器に人種差別と闘った英国の若者たち-“ロック・アゲインスト・レイシズム” を追ったドキュメンタリー「白い暴動」

★2019年ロンドン映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞

 1970年代後半のイギリスで、音楽を通して人種差別撤廃を主張し続けた若者たちによるムーブメント「ロック・アゲインスト・レイシズム」に迫ったドキュメンタリー。(映画.com:https://eiga.com/movie/92551/ より)

作品情報:2019年製作/84分/G/イギリス
原題:White Riot
配給:ツイン
予告編: https://www.youtube.com/watch?v=vKkB9zywzrw
公式サイト: http://whiteriot-movie.com/
公式サイトで上映日・劇場をご確認ください。
  • 栃木 宇都宮ヒカリ座 8/29(土)~

2)≪要予約≫ コリアン・マイノリティ研究会第194回月例研究
「大阪語復興とマイノリティ―言語にとって正義とはなにか―」

お話:門田晶(在野植民地文化研究家。地球ことば村・世界言語博物館会員)
日時:8月29日(土)17:00~19:00 終了後、懇親会
会場:猪飼野セッパラム文庫
参加費:800円・会員600円・学生無料 【要予約】 masipon@nifty.com
主催:コリアン・マイノリティ研究会(猪飼野セッパラム文庫内)

3)都立横網町公園 関東大震災朝鮮人犠牲者 追悼式典

※今年はコロナ対策で縮小のため参加は関係者のみです。式典への一般参加はできません。ネット中継をご覧ください。

日時:9月1日(火)11:00~
youtubeチャンネル「Movie Iwj」にて。
https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501 
主催:関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会



4)≪要予約≫第101回VIDEO ACT!上映会 ~関東大震災朝鮮人虐殺から97年〜 関東大震災朝鮮人虐殺記録映画 『隠された爪跡』

1983年/日本語/カラー/16mm/58分(DVD上映)
上映後、呉充功監督を交えたトーク&ディスカッションを予定
案内→http://videoact.seesaa.net/article/476648599.html

日時:9月1日(火)開場 18:30/19:00~
会場:東京ボランティア・市民活動センター(03-3235-1171)
東京・飯田橋セントラルプラザ10階JR中央線・地下鉄「飯田橋駅」下車 徒歩1分
アクセス→https://www.tvac.or.jp/tvac/access.html
参加費:500円(介助者は無料)
予約:8月31日(月)19時までに下記へ「お名前」「参加人数」「連絡先」をお伝えください。e-mail:jyouei@videoact.jp TEL:045-228-7996(ローポジション気付)
※新型コロナウイルス感染拡大予防のため予約制とします。

上映会告知ブログhttp://videoact.seesaa.net/article/476648599.html
問合せ:ビデオアクト上映プロジェクト
(e-mail:jyouei@videoact.jp 電話:045-228-7996 ローポジション気付)

5)大阪 NO RACISM 街宣 スタンディング+LIVE配信

国の首相や自治体の首長には、関東大震災での朝鮮人虐殺や戦時性暴力のような凄惨な過ちを二度と繰り返さない責任ある行動を求めつづけると共に、今もつづく差別やヘイトスピーチを許さないという意思を示さなければなりません。
9月1日は差別とその加害の歴史と向き合い、NO RACISMを掲げながら一緒に歩きつづけることを訴える日にしたいと思います。

日時:9月1日(木)18:30〜19:30
場所:なんば高島屋前 (地下鉄御堂筋線・四つ橋線・千日前線なんば駅、又は南海・近鉄難波駅より徒歩1分。
スタンディングとリレースピーチ。ツイキャスによるオンライン配信あり。
https://note.com/09_01/n/n5342d2abe082

6)関東大震災97周年  韓国・朝鮮人犠牲者追悼式

日時:9月5日(土)14:30~追悼の花かご作り
15:00~追悼式(主催者挨拶 ・追悼の歌=趙博(パギやん)
追悼のプンムル=プンムル愛好の皆さん
ほうせんかの夕べ=会場移動せず、河川敷で開催。パギやんの歌をお楽しみください。(飲食・参加費なし)17:00終了予定  

場所:荒川河川敷 木根川橋付近(京成八広駅徒歩3分ほど)
問合せ:090-6563-1923 当日15~17時は不通です。

☆小雨決行。雨天時の判断は当日の朝9時にブログ・FBにてお知らせします。
https://moon.ap.teacup.com/housenka/
☆今年はコロナ対策のため、建物内での開催はありません。会関係者で追悼碑前にて行います。
☆受付や案内関係を行ってくださる方は13時半集合です。
☆追悼碑前では、近所迷惑になりますので、ここでの参集はやめ会話交流は避けて下さい。

3.ヘイト街宣・デモ警報

★★ カウンター行動(抗議行動)される際は十分お気をつけ下さい。★★
★★ 経験が少ない方は、複数での参加をお勧めします。 ★★
★★ 無告知のヘイト街宣にご注意ください ★★

1)そよ風 横網町公園「慰霊祭」

日時: 9月1日(火)11:00~
会場:墨田区横網町公園 安田公園口からしか入れないようです。
主催:実行委員会
共催:そよ風

※「石原町犠牲者慰霊祭」と称するヘイト集会が今年も開催されます。
公園内ではほかに慰霊にいらっしゃる方もいらっしゃいます。監視行動は慎重に、一般の方に十分配慮してお願いします。

2)日本国民党道添隆寛 所沢街宣

日時:9月13日(日)14:00~
場所:所沢駅西口
主催:東国保守の会
共催:日本国民党
現場責任者:道添隆寛

#ヘイト行動情報
もし街中で見かけたら、このタグをつけてツイートしてください。以下の情報があるとわかりやすいです。
  • 場所(駅・交差点名、目印の建物など)
  • 人数がわかる全景写真
  • 団体がわかる幟や弾幕の写真
  • 弁士の顔写真

4.新聞・雑誌記事・Webより

1)差別根絶条例への〝攻撃〟後絶たず 匿名の「電凸」常態化

神奈川新聞 8月15日

 差別の禁止と根絶を掲げ、ヘイトスピーチに刑事罰を科す「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に対する攻撃が後を絶たない。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-442335.html

2)「沖縄紙や基地反対運動、中国の手先」 政府機関がデマ後押し 専門家「官製ヘイトで偏見植え付け」

沖縄タイムス 8月15日

 専門家は「官製ヘイトによって今も周期的に沖縄への偏見が植え付けられている」と指摘する。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/616965

3)マイノリティが日々傷ついている「無意識の差別」の正体

現代ismedia 8月15日

 今年5月、米ミネソタ州で黒人のジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され死亡しました。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74864?imp=0

4)7月の川崎街宣で意見書 「ヘイトあった」根拠示す

神奈川新聞 8月18日

 市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は17日、差別主義者の団体が7月12日にJR川崎駅前で行ったヘイト街宣で、在日コリアンをおとしめ、差別をあおるヘイトスピーチが行われたとする意見書を川崎市に提出した。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-444729.html

5)NY市警、ヘイトクライム捜査チーム発足

TBS 8月19日

 アメリカ・ニューヨーク市警察は、新型コロナウイルスの感染拡大でアジア系住民へのヘイトクライム=人種差別などを動機とする犯罪が増えていることから、専門の捜査チームを発足させたと発表しました。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4056701.html

6)人権条例制定巡り議論 相模原市、ヘイト規制視野

神奈川新聞 8月19日

 相模原市の人権施策審議会が18日開かれ、ヘイトスピーチ規制を盛り込むことも視野に入れた市の人権条例の制定を巡って議論した。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-445817.html

7)ヘイト団体、街宣で中国人差別あおる 川崎市は動向を注視

神奈川新聞 8月19日

 極右政治団体「日本第一党」の党員らでつくるヘイト団体「日の丸街宣倶楽部」が14日にJR川崎駅前で主催した街宣で、中国人への差別をあおるヘイトスピーチを行っていたことが分かった。
https://www.kanaloco.jp/article/entry-445641.html

8)伊藤詩織さんが杉田水脈衆院議員と大澤昇平さんを提訴 「ツイッターの投稿で名誉を傷つけられた」

弁護士ドットコムニュース 8月20日

 代理人の佃克彦弁護士は「すごい数の人たちが伊藤さんを中傷し、杉田議員はそれらを片っ端からいいねしている。集団的ないじめのような構造を呈していることが問題だ。寄ってたかって杉田氏が伊藤さんを傷つけていることが、著しい名誉感情侵害だと考えている」と話した。
https://www.bengo4.com/c_23/n_11611/

9)川崎市が「差別的」投稿2件削除要請へ 9月末にも答申 「対応遅い」指摘も

毎日新聞 8月21日

 川崎市の差別防止対策等審査会は21日、ヘイトスピーチを禁止する人権条例に基づいて諮問されたインターネット上の短文投稿9件について「差別的な内容」という方向性を確認した。
https://mainichi.jp/articles/20200821/k00/00m/040/282000c

5.NO HATE TV 第92回「歴史否認教科書の終焉!? 教科書採択現場で何が起こっているのか」

https://youtu.be/B_pPfwcUBXc

がんこヘイト寿司

野間:タブレットで注文するとお冷は0円だが、韓国語メニューは180円。がんこ寿司のお詫びによると、2店のみでそうなっていたと。単純ミスで2店舗だけこういうことが起こるのか。お詫びは「表記に間違いがございました」というぶっきらぼうなもの。韓国人観光客に嫌がらせをする店がある。

安田:大阪の飲食店の嫌がらせをいろいろ取り上げてきた。差別の常態化が大きな問題。

野間:大阪を差別するなとか、偏見だとかチャットにあるが、店がちょこちょこ嫌がらせして、ばれたら謝るというのがめっちゃ多い。そういうことを踏まえてコメントしてほしい。

安田:コロナ禍において「中国人入店お断り」というのがどれだけあったか。

野間:韓国語だけ値段変えるのは面倒臭いだろう。がんこ寿司はわざわざやったのかと思う。

関西ヘイト医科大学

野間:関西医科大学が京都朝鮮学校生の受験を認めなかった。

安田:制度的問題点。朝鮮学校を出ても制度的に高校卒業の資格にならない。が、多くの大学では入学試験を受ける権利を認めている。あえて問題視するのは偏見の結果。

野間:高卒の資格がないとダメと言っていたのは80年代。大検(今の高卒認定試験)をとらないとダメというのが90年代頃。この生徒は高校認定試験を受けて受験資格があるのに断った。法律違反では?言い訳できない差別。しかも願書を送り返してる。

安田:医者で偏見を持っている人が少なくない。

野間:大学入試では、女性差別の問題もあった。

嫌韓民主党

野間:菅官房長官が「日韓関係に決定的影響」があると怒った。韓国の、少女像に対し土下座しているおっさんの像にブチ切れた。国民民主党代表の玉木雄一郎さんが、菅さんの言う通りだと。立憲民主党の福山幹事長も「きわめて遺憾」だとコメント。

安田:あれは民間施設。民間人が何しようが勝手。

野間:日本は公務員が韓国の空港で暴れ、首相がヘイト雑誌のインタビューを受ける状況を全部謝らないといけない。

安田:日本は、韓国が国際儀礼に反しているという言い方をしているが、空港で暴れた公務員なんて国際儀礼ということから見たらめちゃくちゃ。

野間:像は私立植物園の園長が趣味でつくった。河野談話を継承しているので怒るのはおかしい。園長は、最初は土下座しているのは安倍さんと言い、のちに否定しているが、この程度で国際問題になるのはおかしい。韓国政府は関係ない。韓国のことになると安倍政権一体化。これで福山さんと玉木さんが合流したら嫌韓政党が増えるだけ。理屈もめちゃくちゃで嫌韓感情を利用するなら自民党と同対象。名前を嫌韓民主党にすればいい。

河村たかしと悪いなかまたち

野間:名古屋もコロナ感染者が増えているが、河村さんだけがこの非常事態時にやっているのは大村知事リコール運動。悪いなかまたちで一番悪いのが高須院長。昨日やるはずのリコール運動は、感染拡大防止と暑さのため2週間遅らせた。
 ANTIFA758によると右翼政治団体「司政会議」がリコールに加わっている。ネトウヨ団体と「社会の不条理を糾す会」にヘイトオールスターズがくっついた。バカ吸引力が強い。河村さんが呼んでいるわけじゃないけど受け入れちゃう。大村さんはPCR検査のリソース足りなかったら回すと言ってるのに、河村さんは頼めない。名古屋市民の命をヘイトのために削っている。
 ヘイトはあらゆる価値判断を狂わせる。感染病が蔓延しているときには人の命に直接影響を与えうる。この人たちが体現している。典型例が関東大震災の虐殺。

安田:この人たちは日本人の命と財産守れっていうシュプレヒコールを必ずやる。そう言いながらそれらを奪い取るようなことしかしてない。

優生思想たいがいにしろ

野間:前回の放送の翌日にALS患者の安楽死事件があった。一瞬、頼まれた方も仕方なかったのかなと思った。患者はヘルパーにいじめられたりして、死ぬ方法を模索してた。頼れるのが殺した医師たちだったのかと思った。れいわ新選組の舩後靖彦議員の見解を見て、こっちが正しいと思った。
 大阪市長の松井一郎さんは尊厳死についてtweetした。政治がやるのは、死にやすくする法整備ではなく、生きやすくすることでは?尊厳死を議論しようと言っているのは、維新が圧倒的に多い。ある種のトレンド。

安田:命や体を資源の一部ととらえているむきがある。合理性で判断している。尊厳死について議論を持ち出すのは死のとびらを開くことと同じ。

野間:殺害した医者自身が維新みたいなエリート。命の選別したくてたまらなかったのがtweetでわかる。維新が「尊厳死を考えるプロジェクトチーム」を立ち上げると言っている。舩後さんに対し「議論の旗振り役になるべき人が議論を封じるようなコメントを出している。非常に残念だ。」とコメント。維新の政治理念は暴力的。「障がい者にかかる大きな負担は皆さんが払っているお金だ」というナチスのポスターや、生活保護不正受給のバッシングなどにつながる。
 石原慎太郎氏は「業病」とtweetし、後に「難病」と間違えたと謝罪した。石原さんはオールド差別野郎。それが新自由主義や自己責任などの流れのなかでブラッシュアップされ維新になった。Yojiro Nodaが「お化け遺伝子を持つ人の配偶者を国が選定すべき」だとコメントし、めっちゃ炎上した。これこそナチスそっくり。

#小池百合子は9月1日に追悼文を送れ

野間:今年も関東大震災の朝鮮人犠牲者に追悼文を出さない。C.R.A.C.主催のデモで安田さんのスピーチがすべてを説明しているのでそのまま流す。

安田(スピーチ):関東大震災の朝鮮人犠牲者の追悼式が始まったのが1974年。当時の美濃部都知事がこんなメッセージを送っている。「51年前のむごい行為は、いまなお私たちの良心を鋭く刺します」。以来、東京都知事は代々メッセージを送っている。差別的、歴史修正主義的、何もしない知事もいたが、追悼文を送ったのは良心に突き刺さるものがあったからだと信じている。
 ところが2017年、小池都知事が取りやめる。「関東大震災で亡くなったすべての方々に哀悼の意を表したい」と。虐殺の被害者は震災を生き延びたにも関わらず、人の手によって殺された。それが朝鮮人、中国人、一部の日本人。そうした人々と震災で亡くなった人々を一緒にするのは間違っている。天災の中に人災を閉じ込めてしまう行為。「大きな災害に付随する形でさまざまな国籍の方が亡くなった」と言うのは、おまけで亡くなったという物言い。朝鮮人虐殺の認識に対して「さまざまな見方がある」とも言った。つまり事実を認めていない。
 17年、古賀俊明さんという都議議員が「追悼式は日本人に対するヘイトスピーチではないか」と小池さんに質問し「適切な判断をしたいと思う」と回答。追悼式典の行われている場所のそばで、ヘイト団体が偽の慰霊祭を開いている。ヘイト団体は石原町で亡くなった人の慰霊だと言ってるが、実際には「慰安婦の強制連行はなかった」「徴用工は出稼ぎ労働者だった」「関東大震災では日本人が暴行された」といった与太話を飛び交わせた。
 昨年、偽の慰霊祭で出席者の一人はこう述べている。「私たちの慰霊祭の目的は、災害テロを抑制するためのイベントだと思う」。昨年石原町の4つの町会長に取材した。「石原町追悼式は同意や許可、共同で行われているものか」との問いに全員がNOと言った。追悼式を知らない人もいたし、知っていたが目的は知らないという人もいた。どの町会でも議論や話題にもならず、主催団体からも相談があったことは一度もない。地元の同意なくヘイトの目的だけでやっている。
 小池都知事の「適切な判断」がヘイトを呼び込んでしまったのは腹立たしい限り。人の死を軽んじるな、記憶と歴史を勝手に塗り替えるな、奪い取るな、ヘイトに加担するなと小池知事に抗議したい。

野間:一番重要なのは、震災を生き延びた人が別の理由で殺されたという点で、そこをごっちゃにしているのはわざと。工藤美代子さんの本の影響でヘイト団体・そよ風が訴え、小池さんが同意し、ヘイト集会を許可した。石原慎太郎さんのようなオールドヘイターだと虐殺自体は否定しないし、在日特権をあほらしいと言う。
 コリアンが日本にいる経緯はわかっている。小池さんは新世代に属している。しかし、都はそよ風をヘイトスピーチ認定した。本来は一発でアウトにしないといけないが、自分がヘイターだから判断できなかった。

安田:昨年は追悼式に都の職員が相当数いて、そよ風のスピーチ聞いている。本来はそこで判断できないとおかしい。

野間:C.R.A.C.の谷口岳さんが、アルタ前集会後に、東京都への電話を呼び掛けている。文句言うべき相手は3つ。まずは都知事に追悼文を出せ。これは秘書課(03‐5388-2062)。公園管理係には、そよ風に占有許可出すな(03‐5320‐5365)、人権部企画課には、人権尊重条例の適切な運用を(03‐5388‐2584)。人権企画課と公園管理係はやりとりないらしいので、こっちもばらばらにいくわ、ということ。crac.jpにはメアドも書いてあるので、皆さん送ってください。

歴史否認教科書の終焉!?

野間:藤沢市で育鵬社の教科書が選ばれなかった。8年使用されていたが、今年は落ちた。横浜、千葉、名古屋など日本各地で不採用が相次いでいるが、沖縄県石垣島と与那国は採用。沖縄はウヨっている八重山日報や首長とかいる。

安田:本島と離島との違いや、世代交代が進む中でウヨった人が政治的主導権を握ることもある。育鵬社を採択していた都立中高一貫校なども軒並み他社に切り替えている。結論から言うと、新しい教科書をつくる会系の人々の運動が分散され、かつてほどの大きなうねりになっていない。もう一つが市民の反対の声がすごく強かった。とくに横浜。市民の声が強ければ行政を動かすことが可能だという図式ができたという気がする。
 採択の仕組みとして、検定教科書を教育委員会が合議で決める。これまでつくる会系の教科書を採択してきた自治体は首長の強いリーダーシップで保守的な教育委員か指名され、採択される流れだった。横浜は中田市長のもとに保守的な委員が任命されていた。人が変われば教科書が変わる。逆に、強力なリーダーシップを持った極右的な人が返り咲いたら、またつくる会系の教科書が採択される可能性がある。

野間:今年は従軍慰安婦の呼称復活に関して、産経速報が「自虐色強まる」という記事を出した。つくる会が分裂し、元のつくる会の方の自由社の『新しい歴史教科書』は一発不合格。

安田:以前は、検定時に指摘されたミスや注文は修正すれば通っていたが、ルールが変わり、あまりにもミスが多い場合は不合格となる。

野間:歴史修正主義的な教科書は四半世紀にわたり採用されていた。逆転に転じたと思うが。

安田:そうは思わない。育鵬社の教科書が採択されなかったのはよかったが、一方で他社の教科書が育鵬社に近寄っている。全国の50%ほどを占めている東京書籍の教科書は、リベラルな執筆陣がいて誠実につくっているし、教員の支持もあるが、慰安婦の表記もなく、育鵬社との違いが大きいように思えない。歴史教科書をつくり続けてきた豊富な知識と情報量で丁寧につくってあるのが帝国書院や東京書籍。現場からの評価も高いが、日本の戦争責任や負の歴史をきちんと言及するという点に対してはおしなべて後退している。

野間:全体がウヨったから極右の教科書に出番がなくなったということ?

安田:一部の現場ではそう言っている。ウヨったというより強いられている。文科省が認めない。

野間:ウヨウヨした教科書を採用しなくてもある意味バランスよく取り込まれている。道徳教育や愛国心も盛り込まれている。だから東京書籍でも充分ということ。

安田:番外地・別世界と呼ばれている学び舎『ともに学ぶ人間の歴史』。シェアは0.5%くらいだが、我々がイメージしている負の歴史などを言及しているのはこれだけ。教育委員会の意向に左右されない私立の進学校で採用。神戸の灘中、東京の麻布中など。読み物としても面白い。従軍慰安婦については「戦争被害の主張」とし、河野談話を引用。社会運動に関しては、「女性は太陽だった」として女性運動の歴史を見開きで紹介。ナチスドイツについては、アンネフランクの生き方を通して強制収容所のことを書いている。沖縄に関しては「荒れ狂う鉄の暴風」とし、沖縄県民がどれだけ犠牲になったかとを書いている。原爆に関しても「にんげんをかえせ」という見出し。原水禁運動ではゴジラを持ち出している。日米安保条約の改定については、何が多くの人を立ち上がらせたのか、きちんと言及。

野間:昔の教科書とか副読本には、そういう記述があったような気がする。

安田:日本の保守勢力にとって、教科書は憲法と同じ生命線。日本人にふさわしい日本人のための教科書をつくろうという動きは80年代前半から連綿と続いてきた。教科書を変えれば世の中が変わるという思い。
 1981年から「日本を守る国民会議」発足。日本会議の前身。代表は加瀬俊一さんという元外交官で小野洋子さんの叔父。改憲、自主防衛、教育正常化を掲げる。
 1982年、「教科書問題を考える懇談会」を開催し自分たちで教科書をつくった。中心人物は中曽根政権のブレーンだった香山健一さん。当時、学習院大学の教授。昔は全学連の委員長、共産主義者同盟・ブントの創立者メンバー。
 85年に高校用の歴史教科書ができたが、ミスが多く教育現場から不評。
 97(96年の間違いと思われる)年、「新しい歴史教科書をつくる会」発足。同年、日本会議も発足。日教組による石化教育が行われてきたという認識で、教育を正常化しようという目的もあった。つくる会と日本会議が車輪の両軸として教科書運動をひっぱる。
 2006年、つくる会が分裂。代表の藤岡信勝さんが日本会議に引き回されるのが嫌だったらしい。日本会議系が脱退し、日本教育再生機構を結成し版元を育鵬社にして教科書をつくるように。元からのつくる会のメンバーは自由社を版元に。自由社は、育鵬社が盗用したと裁判に訴えたり、お互い批判しあったり、藤岡さんが「育鵬社の営業が自由社の本は極右だと言った」と怒っている。草の根保守派の人たちはいがみ合いに飽き飽きし、運動に身が入らなくなった。育鵬社は6%くらいのシェアがあり、採択されないと商いとしてはしんどい。

野間:が、メジャーな教科書にウヨってるものを忍び込ませることはできた。

安田:世の中が在特会化してきて、デモしなくても同じようなことを言う人はいっぱいいる。それで在特会の存在意義が薄れたように、教科書にも同じことが言える、という人もいる。
 後藤周さんという元中学校の先生が『関東大震災研究ノート№142教科書の中の「関東大震災」』の中で、育鵬社、東京書籍、帝国書院、教育出版、日本文教出版、学び舎、山川出版による関東大震災と虐殺についての記述を比較している。
 育鵬社は関東大震災について187文字、うち虐殺については58文字を割いている。震災における虐殺の記述は31%。東京書籍は32%。帝国書院約24%。学び舎は約78%。山川出版は71%。虐殺の一つの要因は流言だが、流言の記述は育鵬社にはなく、東京書籍にはある。帝国書院は「根拠のないうわさ」としている。
 虐殺の加害者・被害者の記述では、育鵬社は加害者を「自警団」、被害者が「朝鮮人と社会主義者」。教育出版や学び舎では、加害者が「自警団、警察、軍隊」、被害者が「朝鮮人、中国人、日本人の社会主義者」。後者のように、国ぐるみによる虐殺だったことは延べなくてはいけないと思う。帝国書院も自警団しか書いてない。東京書籍は加害者の記述なし。被害者は、育鵬社だけは中国人の記述なし。

野間:自由社は、虐殺の話がゼロ。学び舎は詳しく、朝鮮人の話も盛り込まれている。

安田:教育システムの流れと商いの問題。かつて、大手教科書会社である日本書籍の教科書には慰安婦や強制連行の記述もあった。ゆえに、つくる会ができた97(96)年にウヨの攻撃のターゲットにされる。罵倒罵声のファックスや手紙が寄せられ、教育委員会にも抗議がいき、執筆者の自宅の写真の一覧表が出回ったりした。
 日本書籍は2003(2004年と思われる)年に倒産。二の舞はごめんだと思う流れをつくった。多くの教科書が文科省の指導のもとに記述を削除したり、日本の負の歴史をあまい表現にすることで差異がなくなるという状況が起きている。検定を通したうえで、できるだけ真実を伝えたいというせめぎあいが行われている。学び舎のようにつきすすむのもあれば、東京書籍は商いの事情と理念との間で苦しんでいる状況ではないか。Jな世界が教科書界にも及んでいる。

野間:その結果、東京書籍は関東大震災に関しては育鵬社よりウヨっちゃった。育鵬社不採択で喜んでたけど、Jにやられつつあるということ。
安田:日本の教科書界全体がJな流れの中にある。それを認識したうえで考えないといけないと思う。
(まとめ・文責:のりこえねっと事務局)

6.編集後記

 関東大震災時の朝鮮人犠牲者慰霊祭ですが、今年は関係者のみで行われるとのこと。しかし、ヘイト認定を受けた「そよ風」が同じ日、横網公園での集会を許可されていることは納得できません。「慰霊祭」に名のある石原町町内会は「なにも連絡が来ておらず知らない」(安田浩一さん取材)と言っているのです。
 関東大震災から97年目を迎えた今年は、新型コロナによりネットを通しての慰霊という忘れられない夏になりそうです。(お)
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のりこえねっと通信240号 2020年8月26日発行

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