中日新聞社宛て 抗議文

2017年1月31日

中日新聞社
代表取締役会長白井文吾殿

冠省

御社の論説副主幹(番組テロップ「東京新聞中日新聞論説副主幹」)である長谷川幸洋氏が司会進行を務めるTOKYO MXの情報系番組「ニュース女子」の1月2日放送回にて、「沖縄・高江ヘリパッド問題、今はどんな状況になっている」「『土人発言』以降、報道が無くなった高江は今どうなっている?」とし、沖縄・高江のヘリパッド建設問題をめぐり、当事者に対して一切の取材を行わないまま、反対運動の参加者の多くに対して金銭による報酬が支払われているとする虚偽の放送が行われました。さらに、当会共同代表の辛淑玉に対して、人種差別にもとづく発言、事実と異なる虚偽情報の発信が行われました。公正を求められる基幹放送としてあってはならない内容です。

同番組は、「反対派は何らかの組織に雇われている」「反対派に拘束されてしまうため報道機関は現場に立ち入ることができない」などとする虚偽の内容を放送し、当会をはじめとするこの問題に真摯に関わる人達の信用を大きく失墜させました。また、当会共同代表の一人である辛淑玉に対し、「韓国人がなぜ反対運動に参加するのか」などとする人種差別発言を行い、また、同人が自己の名を利用して<金集め>をしているとの虚偽の情報を流布し、名誉を毀損、社会的信用を貶めました。これらはいずれも関係者や当会への取材を行えば虚偽であると簡単にわかることばかりであり、「ニュース」と銘打った番組が基本的取材も行わずに作られたことに驚きと怒りを禁じ得ません。

御社の長谷川氏は同番組の司会進行であり、毎回、企画段階から番組のテーマや構成にかかわっていると思われますが、ジャーナリストである長谷川氏が なぜこのような安易な番組作りに同意したのか、大きな疑問を感じます。また スタジオでも、VTRや他のコメンテーターの虚偽に基づく内容や発言を訂正することもなく、むしろそれに共感するような発言を繰り返していたことにも、同様の思いを抱きます。

翌週1月9日放送回では、前回の放送後に事実と異なるとの指摘を受けてい たにもかかわらず、司会の長谷川氏は、同番組の問題点を正すことをせず、逆に、コメンテーターに対し“トンネルの向こうでぽかぽかやられるのを見たかった”と述べて、反対運動の参加者が報道機関の記者に暴力を振るっているとの虚偽の情報を改めて流布する発言に終始しました。

冒頭の繰り返しになりますが、長谷川氏は御社の論説副主幹という社論を決定すべき立場にいる方です。そのような方が、その肩書きとともに同番組に深く関与していたことに対する雇用者責任をどのようにお考えでしょうか。

また、御社とくに東京新聞はこれまで沖縄の問題に関して、東京特報部を中心に本土の他紙よりも圧倒的に多いボリュームを割いて基地反対派に理解を寄せる記事を出稿なさってきましたが、それと今回の「沖縄差別・沖縄ヘイト」的な番組の司会を論説副主幹が務めていたこととの整合性をどう取られるのでしょうか。

“高江の現場では記者が拘束されてしまうので取材ができない”との論説副主幹の言に従えば、御社の一連の記事は、高江の現場に立ち入ることなく、また、反対運動の参加者への取材をすることなく書かれたものと解釈するほかなくなります。このような発言を「東京新聞中日新聞論説副主幹」の肩書きで行うがごときは、御社の記者の真伨な取材活動、ひいては、御社の新聞購読者の信頼を全否定するものといわざるをえません。

以上に関して、2017年2月7日までの回答を求めます。

不一

のりこえねっと共同代表 辛淑玉(人材育成コンサルタント)
高里鈴代(平和市民連絡会共同世話人)
西島藤彦(部落解放同盟中央本部書記長)
中沢けい(作家・大学教員)
北原みのり(作家)
鈴木邦男(一水会顧問)
佐高信(評論家)
若森資朗(一般社団法人協働センター東京)

上記代理人弁護士 金 竜介・金 昌浩・神原 元