ヘイトスピーチとは?

ヘイトスピーチとは

 民族、宗教などを理由に社会的少数者を対象として憎悪表現を用い差別を扇動するものがヘイトスピーチである。近年、注目されるようになったヘイトスピーチはネット掲示板2チャンネルなどでは1999年の開設当初から類いするものを見ることができた。路上での活動は2002年の日韓ワールドカップ開催の頃から目立ち始めたと言われる。

 2006年には「在日特権を許さない市民の会」通称「在特会」が結成され、ヘイトスピーチデモがくりかえされる。ネット掲示板を温床にしていたヘイトスピーチが「政治的主張」を装うかたちで路上へ進出した。

 2009年には京都朝鮮第一初級学校への襲撃事件が起きている。

 2012年8月に李明博大統領の竹島上陸をきっかけにデモ・街宣などが激化。東京・新大久保、大阪・鶴橋などで数百人規模の大規模なデモが繰り返された。

 ヘイトスピーチに抗議をする市民の出現により大規模なデモおよび街宣は下火とはなったが、予告なしのステルス型の街宣などが現在も続いている。(中沢けい)

 


ネットとヘイトスピーチ

 右翼思想が社会的に認知されるようになったきっかけは、「朝まで生テレビ」だった。当時、まだ社会の片隅に位置していた「右翼」が、テレビの画面に登場し、対等なものとしてお茶の間に入ってきたのだ。

 2007年、パソコンが急速に普及する中、ブラウザを開いただけで「MSN産経ニュース」が表示されるようになった。自らの手で設定などできない大多数の人たちは、右翼的ニュースが垂れ流されるのを見ながらパソコンを使用するという状態が、昨年秋まで続いた。

 ネットは、その初期の頃には知の共有という一面も持っていたが、またたく間に性情報を拡散する手段となり、同時に、匿名性の陰に隠れて、普通なら表には出せない感情を露出する装置としても機能するようになった。

 その代表が「2ちゃんねる」だ。これも最初は一般の目には触れない存在だったが、社会環境の変化とともに成長し、やがてここから「ネトウヨ」が登場する。そして、ブログからフェースブック、ツイッター、YouTubeなど、情報発信が容易になればなるほど、多様なツールを駆使してヘイトが拡散されるようになった。

 その後、極右テレビ「桜チャンネル」とドワンゴ「ニコニコ動画」の登場によって、ネトウヨは完全に市民権を持つに至った。在特会などのヘイトは、このドワンゴによって強力に拡散され、拡大再生産されている。

 「三国人発言」の石原都知事をはじめ、政治家たちによるヘイトが放置されたことも、排外主義を後押しした。日本政府は国連人種差別撤廃委員会からの勧告を繰り返し公然と無視し、それが社会的に糾弾されるこもなかった。

 同時に、旧日本軍による戦時性暴力問題を契機に歴史修正主義者が台頭し、歴史修正主義に基づく独自の教科書を作るなど、ドブ板の活動で着実に社会の中に浸透していった。

 「アイヌ民族はいない」などの、国会議員や地方議員によるヘイトも発言も、嫌悪を煽ることで簡単に売上が上がることから、不況に苦しむ出版社が飛びつき、嫌韓・嫌中本ブームを作り出した。2014年にはほとんど書店の棚を制覇する勢いとなり、それがさらにネットと連動していく。

 いまや、ネットで何か検索をすれば、必ず嫌韓・嫌中記事や在日特権デマにたどり着く。ウィキペディアも日本語版は大きく右傾化し、同じ項目の日本語版と英語版ではまるで内容が違っていたりする。YouTubeでは、一度何か興味のあるものを視聴すると、同種のものが次から次へと推薦されるというその性質から、憎悪の再生産を推進する強力なエンジンとなっている。スマホの利用率の拡大は、この傾向をさらに後押ししたと言える。

 ヘイトのターゲットとされたマイノリティには、苦痛に耐え切れず、ネットの利用をやめた者もいる。それを「嫌なら使わなければいい」と嘲笑する風潮は、「嫌なら帰れ」というのと一緒だ。
そうしたヘイトに抗議する者は集中砲火を浴びる。身元を暴かれて会社にまで嫌がらせが来たり、退職を余儀なくされる者も出てきた。

何としても、メディアを良心ある人々の手に取り戻さなければならない。(辛淑玉)

 

ヘイトデモ・街宣活動の件数


■2013年

2013年に日本国内で企画されたレイシズムに関するデモや街宣活動の件数は、少なくとも360件余りにのぼった。
ヘイトスピーチの対象は、在日韓国・朝鮮人や韓国・中国だけでなく、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたる。また、デモや街宣活動の他にも、排外主義を宣伝する講演会やシンポジウム、パネル展、親睦を深めるための活動等が頻繁に行われている。

 

hate_2013

(行動保守アーカイブプロジェクト調べ http://www.acap.link/

■2014年

2014年に、日本国内で行われたヘイトデモや街宣活動の件数は、前年度を大幅に上回る467件にのぼった。2013年と比較すると、関東、関西での伸びが目立ち、他の地域では漸減している。

 

hate_2014

(行動保守アーカイブプロジェクト調べ http://www.acap.link/

■2015年

2015年全体のヘイトデモ・街宣の件数は、まとめられていない。上半期に関して、まとめサイトに下記のコメントがある。

「上半期の件数を比較すると、2012年(4/1-6/30)94件、2013年186件、2014年282件に対して、2015年は136件と減少している。参加人数も激減している。しかしヘイトスピーチの内容はより過激に、より悪化している印象。」[@odd_hatch 2015-07-09 13:49:49]

(2015年上半期 ヘイトアクションとそれに抗議するカウンターアクション http://togetter.com/li/844935