米軍基地の過重な負担に苦しむ沖縄県民有志と、ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク・のりこえねっとは、東京メトロポリタンテレビの番組「女子ニュース」が、1月2日に放送した、沖縄高江に建設が強行されている米軍海兵隊ヘリパッド反対運動についての報道内容に対して、きびしく抗議するため、共同で声明を発表します。
沖縄県高江に建設が強行されている米軍ヘリパッド基地に対する抗議運動について、同番組は、高江のヘリパッド建設問題の経緯や争点について触れることなく、「反対派は日当をもらっている」などと事実を歪曲し、また、反対運動にかかわるのりこえネット共同代表の在日コリアン三世の女性に対して、「なぜ韓国人が反対運動に参加するのか」と人種差別にもとづく報道を行いました。
このような報道内容は、放送法が第4条に定める「政治的に公平であること、事実をまげないこと、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」という原則に著しく違反するだけでなく、昨年成立したヘイトスピーチ対策法(人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律)が規定する不当な差別的言動に当たるものであるといわざるをえません。
また、沖縄での反対運動やのりこえネットに対して取材の申し入れもせず、裏付けもとらない取材姿勢は、法以前の取材モラルの基本すら満たしていない悪質低俗なものであるといわざるを得ません。
のりこえねっとは、この番組に対して、1月5日に抗議声明を発表し、BPO(放送倫理番組向上機構)に対する人権侵害の申し立てなどあらゆる対抗手段をとることを明らかにしました。また、同番組をみた多くの視聴者が抗議の声をあげ、同テレビ局を取り囲む抗議行動も行われました。
同番組に対する抗議の輪が大きな社会的拡がりをみせると、同番組は、1月16日の番組で「様々なメディアの沖縄基地問題をめぐる議論の一環として放送」したと15秒間の釈明放送を一方的に行いました。
この釈明では、この番組は沖縄の基地問題をめぐる議論の一環であるという認識が示されています。しかし、そうであるなら、沖縄の米軍基地問題全体のなかで高江ヘリパッド建設問題を捉え、また、それが沖縄県民にとって負担の軽減になるのか、逆にさらなる重圧となるのかについても触れられなければ公平な報道とはいえないはずです。そのような論点をすべて避け、もっぱら反対運動を歪曲中傷する番組が首都東京のテレビ局から「沖縄基地問題をめぐる議論の一環」として放送されたということを、私たちはさらなる驚きと憤りをもって受けとめました。
このことは、とりもなおさず、この番組によって示された沖縄の基地問題についての認識が、首都東京、つまりこの国の中心の沖縄基地問題に対する認識、さらに、沖縄という存在に対する認識の在り様を象徴的に露呈させているといわざるをえないからです。
戦後、日米軍事同盟が沖縄に課してきた重圧と負担を無視しつづけ、日米同盟関係の負担を沖縄だけに押し付け、恩恵はもっぱら中央政府と東京が享受する構造を甘受し、日本の防衛とは無関係な任務で駐留する海兵隊が引き起こすさまざまな凶悪事件に対する沖縄県民の怒りを他人事として見過ごし、米軍基地の存在が沖縄の経済発展にとってもはや障害要因でしかないにもかかわらず「基地経済の恩恵がなければ沖縄は生きていけないから仕方がない」という誤った認識で沖縄の苦しみを合理化してきました。
政権の中枢が宿る東京が沖縄に対して意識的無意識的に構築してきたこれら誤った認識、とりわけ首都に偏在する放送局や新聞社等のメディアの沖縄認識の在り様を体現しているのが、今回の番組であると断じざるをえません。
そして、それらの誤った認識の背後に歴然と存在するのは、近世初期における薩摩の琉球侵略、さらに近代初期における琉球処分によって歴史的に示されてきた沖縄に対する差別と民族的偏見です。
のりこえねっとが、なぜ高江のヘリパッド建設問題にかかわるのかという理由も、そこに日本の沖縄に対する民族差別と人権侵害をみるからにほかなりません。そして、沖縄県民がこの番組に憤りを感じる原因も、そこにあります。
今や東京メトロポリタンテレビ「女子ニュース」が露呈させた沖縄認識は、たんに高江ヘリパッド建設問題にとどまらず、広く日本メディアに蔓延して消えることのない沖縄に対する人民族的偏見と差別意識の根幹にかかわる問題として理解される必要があります。
そして、そのような差別や偏見を解消するために、ただちに行動を開始する必要があることを広く社会に訴えます。
最後に、私たち、米軍基地の過重な負担に苦しむ沖縄県民の有志とのりこえねっとは、沖縄に対する差別と偏見を看過せず、根源的な変容を加えるために、ここに、共同して次のことを要求します。
民間放送連盟は、その傘下にある東京メトロポリタンテレビジョンに対して、放送法第4条に違反し、また、「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律」が規定する不当な差別的言動に当たる番組を放送したことを理由として除名処分を行うよう求めます。
東京メトロポリタンテレビジョンは、公平な報道を実現するため、今回、女子ニュースによって誹謗中傷を一方的に受けた高江ヘリポートに反対する住民とのりこえねっととが制作に参加する反論番組を制作し、女子ニュースと同程度の時間枠で放送することを要求します。
2017年1月27日
衆議院議員会館にて
のりこえねっと共同代表
辛 淑玉、高里 鈴代、西島 藤彦、中沢 けい、北原 みのり、鈴木 邦男、佐高 信、若森 資朗 他
沖縄県庁にて
平和市民連絡会共同世話人・高里 鈴代、池宮城 紀夫(弁護士)、目取真 俊(作家)、安慶名 奈々、平和市民連絡会・岡本 由希子
(賛同者氏名 着順)牧志 治、桑江 淳、高垣 喜三、高垣 縁、玻名城 晋 、饒波 修 、山内 末子、当山 なつみ、北上田 毅、水谷 律子、山城 珠代、宮城 康博、比嘉 喜政、城間 盛松、泰 真実、浅井 大希、松田 毅、鈴木 雅子、堀田 ちえこ、仲村渠 政彦、金井 創、利根川 千恵 、知花 優子、高野 俊一、阿波根 昌信、阿波根 美奈子、上間 芳子、宇山 裕明、大城 要、大城 喜代一、大城 寿代、大城 ナエ、大城 博子、大浜 節子、大浜 長伸、親盛 節子、喜屋武 杉子、久保 礼子、崎浜 シズ子、佐藤 明美、島津 八子、祖堅 洋子、高良 みづえ、玉栄 さとみ、徳森 セツ子、仲宗根 須磨子、原田 城二、原田 みき子、比嘉 美智子、松川 成子、松堂 僑子、山川 ひとみ、島袋 義久、平良 啓子、金城 祥一郎、金城 勇、東武 久、吉浜 覚、金城 初子、三上 智恵、安里 邦夫、桃原 功、知念 貞子、大城 逸子、大城 惠理、浦島 悦子、渡瀬 夏彦、松葉 孝雄、城間 真弓、與那覇 沙姫、宮川 光世、大西 章、坂尾 美知子、間島 孝彦、下地 喜美江、山内 榮、不屈館・内村 千尋、長嶺 智子、松井 裕子、高嶺 典子、相原 更沙、赤嶺 登美子、安慶名 芳勝、安慶名 克代、東 悟、東 智子、上原 美智子、上原 理央奈、宇良 圭子、岡添 晃、岡添 克子、川満 キヨ子、北山 睦子、久田 公子、佐久川 美代子、佐久川 美栄子、城間 博子、新里 健二、新里 清子、徳尾 典子、長嶺 善勇、名城 文子、前原 幸子、前原 信俊、前原 信也、前原 晴美、前原 貴絵、宮里 トミ、宮城 安子、宮城 勲、饒平名 智子、饒平名 艶子、渡邊 章子、親川 志奈子、宮城 晴美、仁尾 淳史、山内 徳信、崎原 盛秀、伊波 義安、仲宗根 勇、照屋 寛之、平良真 知、山城 正和、当真 嗣清、山城 京子、照屋 勝則、照屋 房子、山城 多喜子、真鍋 誌苑、鴨下 祐一、屋富祖 昌子、西木 昌孝、平山 ふさえ、大西 章、澤田 利香、沖縄平和市民連絡会、 沖縄県マスコミ労働組合協議会、 沖縄平和ネットワーク、沖縄のマスコミを支える会、 沖縄国際人権法研究会 他